【遠藤功氏・講演】遠藤功のプレミアム戦略(その5)

世界に打って出ることによってプレミアムがビジネスになる

『ToyokeizaiLIVE』シリーズ RoppongiBIZ*東洋経済提携セミナー
講師:遠藤功(早稲田大学大学院商学研究科教授、(株)ローランド・ベルガー会長)
2008年1月29日 六本木アカデミーヒルズ

その4より続き)
 7番目は、細部にこだわること。プレミアムで一番重要なのは、ここだと思っています。お客さんの目に触れるすべてにおいて、完璧性と一貫性を求めなければいけない。商品が入る箱、リボン、バッグ、もうすべてのところに目配せをしなければいけない。ここは日本の会社の下手なところですよね。カルティエやエルメスは上手です。女性が箱をあんなに大切に取っておくのはなぜか。そこに価値があるんです。このぐらいでいいやと思ってしまうと、そこから崩れていく。
 京都で有名な川端道喜のちまきは、5本で3150円。1本630円です。日本で一番歴史のある、ちまきです。非常に柔らかな作りで、持ち帰りだと崩れてしまうわけですね。なので、わざわざ持ち帰り用の紙袋の底にクッションを入れてくれる。この小さな心づかいに感動するわけです。そういう感動が無かったら、「えっ、これで3150円!」となるわけです。細部へのこだわりがあるから「ああ、細かいところまで気を使っているね。だから川端道喜だ」になるわけで、やっぱりそういうところを考えなければいけない。

●プレミアムなステージは世界

 そして8番目は、グローバルを目指すこと。国内でのプレミアム・マーケットは、たかが知れています。プレミアムを欲しがるお客さんは世界中にいるわけで、いいものはいいと認める。そういうところをターゲットにしながら世界に打って出るということを考えなければいけません。世界に打って出ることによってプレミアムでもビジネスとして成り立つわけです。国内だけだったら「商売」に終わるわけですね。「ビジネス」にするためにはやっぱりグローバルに出ていかなければいけません。
 そういった意味で、ミキモトというのはすごいと思いますね。ミキモトは1899年に御木本幸吉が創業した真珠の宝飾企業。世界で初めて真珠の養殖に成功したんです。明治の時代ですよ。そして創業の10年後にはロンドンに出ているわけです。この気持ちのすごさ。「世界で売るんだ」ということを最初から目指したわけです。しかも、知名度を上げるために、連続的に万博に出ていますよね。日本発の高品質の真珠をそこでアピールしたわけです。こういうことをやってきた会社があるわけです。なんでそういうことをみんなチャレンジしないのか。私は、日本の会社だからプレミアムが生まれないとは全く思いません。日本の会社は商品力では優れています。デザイン性でも優れています。あとはプレミアムを生み出す器量ですね。

 最後になりますが、一言で言うとプレミアムは「熟成」だと思っています。ストーリーを作るのも熟成。お客さんのファンを作るのも熟成です。そういった意味で時間をかけてじっくり10年、20年とやっていかなければいけない。だからなるべく早くスタートしないと、手遅れになってしまうわけです。
 繰り返しになりますが、トヨタ自動車がなぜレクサスをあんなに真剣にやっているのか。そこには意味があるわけです。ただ単に、そこにおいしいマーケットがあるからではなく、日本が今まで主戦場としたところはどんどん攻められる。自分たちはもっと新しいマーケットを開拓していかなければいけないからです。その一つの方向性として「プレミアム」を考えていく必要がある。今までと違う発想で、経営の戦略としてこれを打ち出していくことの必要性を、ぜひご理解いただきたいと思います。
(終)
遠藤功(えんどう・いさお)
早稲田大学大学院商学研究科教授、株式会社ローランド・ベルガー会長
早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機株式会社、米系戦略コンサルティング会社を経て、現在に至る。
著書に『現場力を鍛える』『見える化』『ねばちっこい経営』(東洋経済新報社)などがある。
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