長時間労働にパワハラ、具体的な対抗策とは 退職せずに是正を求めるための方法論

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とはいえ法律上、労働者が前述したような手段をとったのち、会社がその労働者に不利益な取り扱いを行うことは禁止されています(労働組合法7条1号、労働基準法104条2項、公益通報者保護法3条から5条1項)。

「不利益取扱い禁止」に違反する行為を企業が行った場合には、その行為が不当労働行為に該当したり、刑事罰の対象になることがあります。

労働者としては、獲得目標の達成のためにどの手段をとるべきであるか、法律が定める不利益禁止を背景にどのように会社側と対峙するべきであるか、専門家の意見もききながら事案ごとに考える必要があるといえます。

どのような証拠が必要?

いずれの手段をとる場合であっても、長時間労働やパワハラの証拠を集めておくことが重要です。長時間労働であればタイムカードやパソコンのログ記録が一般的ですが、それらの記録が実態を反映していない場合は、会社で深夜に送った業務メールをプリントアウトしたものも有効となります。

パワハラについては、録音のように言動を記録できていると立証に役立ちます。あるいは、状況を見ていた人の証言も重要な証拠となります。特に、労働基準監督署への申告時には、相談内容の信ぴょう性を高め、速やかに対応してもらうためにも、このような証拠を携えることは有効です。

なお、退職後にも、前述したような訴えは可能ですが、「労働者」という地位が失われているために、対処法の選択肢の幅が狭まります。しかし、退職しているがゆえに、会社とことを構えることによるデメリットが減るとも言え、パワハラに対する慰謝料請求を行ったり、未払い残業代がある場合はその請求を行ったりするなど、自分の請求権を行使することが主な手段となります。

それが間接的に社内環境の改善を促すことにもなるでしょう。

竹花 元(たけはな・はじめ)弁護士
2009年の弁護士登録と同時にロア・ユナイテッド法律事務所入所。2016年2月に同事務所から独立し、法律事務所アルシエンのパートナー就任。労働法関連の事案を企業側・個人側を問わず扱い、交渉・訴訟・労働審判・団体交渉の経験多数。
事務所名:法律事務所アルシエン

 

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