太陽電池、日本企業に逆襲のチャンス トップ企業が相次いで破綻、日本企業に好機到来

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FITは、再生エネルギーで発電された電気を、固定価格で一定期間調達するよう、電気事業者に義務づける制度。そのままでは価格競争力を持たない太陽光による発電分を高値で引き取ってくれるため、投資マネーも含めた非電力事業者が次々と太陽光発電事業に参入した。

05年にドイツは太陽光発電の累計導入量で日本を抜き去り、先頭に躍り出た。さらにFITの採用、買い取り価格引き上げが欧州各国に広がったことで、太陽電池メーカーの勢力図も一変した。

まず飛び出したのがQセルズだった。1999年創業のベンチャーがシャープ、京セラ、三洋電機など上位を独占していた日本企業を軒並み抜き去り、07年には世界一の太陽電池メーカーとなった。

だが、そのQセルズの天下も長くは続かなかった。乗り遅れるなというばかりに参入してきた中国、韓国勢に蹴散らされてしまったからだ。

「太陽電池は、半導体や液晶に比べてもより参入障壁が低い。最新の製造装置さえ導入すれば、技術やノウハウがなくても簡単に生産できる」。30年前から太陽光発電事業に携わる資源総合システムの一木修社長は、太陽電池が過当競争になった理由を説明する。

リーマンショック後に経済が悪化した欧州各国は補助政策を縮小。市場の伸びが鈍化する一方、工場の新設、増産は相次ぎ、現状、生産能力は需要のほぼ2倍の水準にある。

「太陽電池産業の大きな問題は、過剰な生産能力による過剰供給だ。太陽電池の販売価格は下落し、多くのサプライヤーは多額の損失を出している」(NPDソーラーバズのフィンレイ・コルビル副社長)

太陽電池は設備産業であるため、一時的に採算割れでも、工場の稼働を維持する誘因が働く。生産した以上は安値でも販売したほうがいい。かくして、過去3年間でパネル価格は5分の1に下落してしまった。

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