トランプを支える「バノン」の危険すぎる正体 極右メディアのドンが吠え始めた

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イスラエルやロンドンにも支局を構える同サイトは 、この1カ月で4500万ユニーク・ビジターが利用したとうたっている。取り上げるニュースは、ファクトの報道よりも扇動的なストーリー仕立てで、「避妊は女性を醜くし狂わせる」といったタイプの見出しが踊っている。

バノンは、ブライトバート・ニュース以外に、政府アカウンタビリティ研究所(GAI)という保守派の非営利組織の設立に深くかかわっている。設立は2012年だ。GAIの所長ピーター・シュヴァイツァーが記した著書『クリントン・キャッシュ』(2015年)は、クリントン夫妻をサポートする外国政府や企業をあぶり出して、ヒラリー・クリントンにダメージを与えるものとなった。

戦略官の「仕事」とは?

トランプの選挙活動にかかわり始めた今年8月以降、ブライトバート・ニュースから離れているバノン氏は、その後のインタビューで「白人至上の国粋主義者、人種差別主義者、女性蔑視派、外国人嫌い、反ユダヤ」という自身への批判をすべて否定している。個人生活では、3度の結婚をすべて離婚で終えており、前妻からは反ユダヤ的な発言をしたことや家庭内暴力があったことも明らかにされている。

主席戦略官・上級顧問と言えば、いつも大統領の脇に控え大統領の耳に知恵をささやく人物だ。ホワイトハウスでは戦略補佐官の役割が、しっかり定義されているわけではないが、主席補佐官が大統領を直接サポートし、ホワイトハウスの人事をつかさどるのに対して、戦略補佐官はその時々の大統領や人選によって役割が異なっている。大きな長期的ビジョンを示唆する役割であったり、再選のための戦略を練ったりする役割だったりする。

トランプは、主席補佐官に指名したラインス・プリーバス共和党全国委員長とバノンを「対等のパートナー」だと強調しているが、極右のバノンとよりエスタブリッシュメント派のプリーバスは、ホワイトハウス内に対立をもたらすのではないかとも見られている

バノン氏はリベラルだけでなく、共和党のエスタブリッシュメントも毛嫌いしている。だが、彼の批判者はバノン氏にはそれ以上の統合したビジョンが見られないともしている。同氏を判断するには今後の展開を待つしかないが、広く不穏な人事と受け取られていることは間違いない。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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