【遠藤功氏・講演】遠藤功のプレミアム戦略(その2)

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『ToyokeizaiLIVE』シリーズ RoppongiBIZ*東洋経済提携セミナー
講師:遠藤功(早稲田大学大学院商学研究科教授、(株)ローランド・ベルガー会長)
2008年1月29日 六本木アカデミーヒルズ

その1より続き)
 では、「プレミアム」というのは何なのか。いろいろな定義がありますが、そもそもプラス・アルファの価値のことをプレミアムと呼ぶんですね。私が一番プレミアムを分かりやすく伝える言葉として感じているのは、「ワクワク、ドキドキするか」ということです。より本物だったり、極上だったり、レベルの違う別世界の一番いい商品というのがプレミアムだと。当然、それはあこがれにもつながっていくわけです。ワクワク、ドキドキしてしまったらお客さんは対価を払ってしまうんですよ。その部分が、エモーショナルな「情緒的価値」です。

 皆さん、どういう買い物をしたときにワクワク、ドキドキしました? 私が最初にワクワク、ドキドキしたのは、やっぱり初めて外車を買うときでした。BMWのディーラーに行ったときには足が震えましたよ。そして契約書にサインするときは、いいのかなあと(笑)。そういう高揚感が、日本の商品を買いにいくときにあるのかどうか。残念ながら、多くの日本の会社には、情緒的な価値を提供するノウハウがない。そうすると幾らいいものを作っても、それは所詮プレミアムにはならない。じゃあ、ワクワク、ドキドキってどうやったら生まれてくるんだろうということをやっぱり解明していかなければいけないわけです。
 ただし、機能的な価値が高くないのに、情緒的な価値を補おうと思っても無理なんですね。まずは究極の機能的価値、自分たちらしさというものをどこまで出せるか。それがあってこそ情緒的価値も生まれるのだと思います。例えば、お客さんは最初に自動車としての本質的な価値を求めている。そこが不十分だと、幾らどんな努力をしても反応しないのです。

 つまり、私が言っているプレミアムとは、一つはどんな製品であれ、どんなサービスであれ、まず機能的価値があります。「ファンクショナル・バリュー」ですね。当然プレミアムというのは、この機能的価値を極限まで追及した商品です。本当においしいとか、走りがいいとか、着心地がいいとか。圧倒的な機能的価値というものを究めるというのは、非常に重要な要素になるわけです。
 ただ、これを詰めれば先ほど言った「ワクワク、ドキドキ感」って生まれるのかというと、残念ながらそうではない。やはり、もう一つ縦軸が重要です。これが情緒的価値、「エモーショナル・バリュー」ということですね。何だかわけが分からないけど、ワクワクする……お客さんは、その製品の持っている雰囲気とか空気で何百万円も払ってしまったりするわけです。

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