グーグルAMPは「効果てきめん」といえるのか 媒体社からは驚きの声「常軌を逸している」

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「検索全体に対して、AMP導入でほぼ10〜15%とトラフィックが上昇している。そのため、あるヒットプロダクトが生まれると、検索リファラの動きは、予測不可能になる」と、アッバス氏はいった。「ソーシャルの価値が低下してきている、つまり検索は自然と価値を上昇していくことになる」。

要するに、インスタント記事は新規チャンネルではあるが、事実上、AMPがモバイルWebとしていち早く成功しているということだ。そのため、パブリッシャーたちは選択の余地もなく、それに便乗するほかない。「そのオーディエンスにアクセスしなければならない」と、パーチの最高技術責任者(CTO)、ジョン・ポッター氏は述べている。

広告フォーマットは発展段階

一方、広告販売についてパブリッシャーたちは、インスタント記事に対して抱いたのと同じように、AMP対しても複雑な気持ちになるはずだ。AMPではインスタント記事と同様、記事はそのプラットフォームのエコシステムに組み込まれ、そこでパブリッシャーが実行できる広告の種類だけでなく、自社サイト内で収益を生み出す能力も限定される。現在、フェイスブックはインスタント記事に、パブリッシャーが利用可能なより多くの広告フォーマットを追加しており、今後さらに拡充される可能性がある。

「ニューヨーク・デイリー・ニュース」は、グーグルがダイナミックアロケーションの開放を認め、自社サイト内での収益改善が図られたため、AMPページは当初、自社サイト収益の50%しかマネタイズできなかったと、同社のデジタルシニアバイスプレジデント、グラント・ホイットモア氏は語った。パーチでも、プログラマティックに販売している際は、AMPページで自社サイト収益の75%しか生み出していないという。

パーチCTOのポッター氏は、全体のトラフィックのわずか4%にすぎないことを考慮し、現段階においてはAMPにほどんど力を入れておらず、それで問題はないと語る。しかし、先を見据えたとき、広告料を直接値上げすることは、より難しくなるだろうと彼は考えている。というのも、適切なフォーマットで広告が入稿されるかどうかは、エージェンシー次第だからだ。「彼らはもっと多くの広告オプションを提供することを期待している。しかし、その大前提はスピードだ」と、ポッター氏は語った。

「USAトゥデイネットワーク」は、AMPページからのマネタイズをはじめたばかりであると、同社のカンツ氏。「長い目で見れば、そのほかのプラットフォームと同様に、AMPでも収益化できるようにする必要がある。いまのところ、プログラマティックしか利用できない。しかし、AMP上で動画広告やブランドコンテンツなどを掲載できるようにして、いっそう意義のあるビジネスチャンスになることを我々は期待している」。

また、現状AMPでは、編集記事を改善するために必要な読者の動向、情報に関してのデータ入手も限定されているとパブリッシャーたちは口をそろえる。検索トラフィックが向上している場合、パブリッシャーの訪問別ページビューは下がっている。一説によると、それは、AMPページは人々に、すぐに次のAMP記事をスクロールするように促しているためということだ。

グーグル担当のレップによると、AMPはより多くの広告フォーマットに対応しており、サブスクリプションなどをフィーチャーした機能にも取り組んでいるようだが、詳細は何も公にされていない。「グーグルの意図であろうと、または意図がなかろうと、AMPに関わる我々すべてが、高速Webを作り、広告またはサブスクリプションによって、マネタイズと質の高いコンテンツの維持に専念している。開始当初からそれは守られており、ますます機能を増やしながら、我々は急速に構築している」と、グーグルニュースのバイスプレジデント、リチャード・ジングラ氏は語る。

パブリッシャーはまた、必要最低限のものだけが装備されたAMPページによる、ブランド認知の喪失を懸念している。「スリリスト」が、自身のAMPページをモバイルWebページのほうに似せようと力を入れているのはそのためだ。「人々が我々の記事を読んでいるとき、『スリリスト』のニュース記事を読んでいる、ということを分かってもらうように設定していきたい」とロビンソン氏は述べた。

Lucia Moses (原文 / 訳:Conyac)

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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