中国の金融波乱は李克強首相の宣戦布告 金利急騰は、シャドーバンキング退治に向けた荒療治

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規律回復を狙い引き締め

ここに至るまでには、いくつかの偶然と必然が重なり合った。

まず、6月には資金需要が高まる条件がそろっていた。中間決算の期末に当たること、納税シーズンであること、端午節の連休を挟むこと、などだ。さらに、米国の金融緩和政策が出口戦略に向かうという観測で、海外からのホットマネー流入が減少。輸出の水増しで外貨を持ち込む不正取引への取り締まりが強化されたことも、こうした動きに拍車をかけた。

そして最大の要因が、中央銀行である中国人民銀行が短期市場での流動性供給を絞ったこと。拡大著しいシャドーバンキング(銀行を介さない金融取引)を抑制し、金融市場の規律を高めるためだ。

中国におけるシャドーバンキングとは、信託会社による貸し付けや、高利の「地下銀行」も含む民間金融などだ。貸し出しルールの厳しい国有銀行が、自らは貸せない相手に取引先の企業を経由して融資する場合もある。「融資プラットフォーム(融資平台)」といわれる地方政府の資金調達機関へのマネーの供給路ともなっており、地方政府債務の膨張に一役買ってきた。金利が安い短期資金を調達し、長期で運用するというリスクの高い取引も横行している。

みずほ総合研究所の伊藤信悟・中国室長は「人民銀行は行政手段だけでなく、金利も使ったシャドーバンキング統制へと舵を切った。短期金利を高止まりさせているのは意図的なものだろう」と見る。

シャドーバンキングの副産物に、貸出債権を小口化して販売する「理財商品」があるが、6月末にはその満期が24兆円ともいわれる規模でめぐってくる。

この3月、中国の金融当局は商業銀行の理財商品の資産内容についての規制強化を打ち出した。その結果、「6月末の理財商品のロールオーバーが難しくなった中小銀行などがうろたえて資金調達に走ったことが金利を引き上げた」(北京の国際金融筋)。

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