上から目線の人と、体育会的なノリが嫌い ユナイテッドアローズ 重松会長の好き嫌い(下)

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いちばん好きなことからいちばん最初にする

楠木:重松さんは、基本的には楽観的なタイプですか。

重松:楽観的だと思います。今日、楠木さんと話をしてわかったことは、そもそも、私はあまり嫌いなこととか、苦手なことが少ない気がします。しかも、嫌なことの記憶はほとんど忘れているし(笑)。

楠木:かなりの楽観派かもしれません(笑)。

重松:仕事に関して付け加えると、本当に幸運だったと思います。ほかの人からも、運がよかったねとよく言われるのですが、本人がいちばん自覚している(笑)。自分の運のよさを確信していると言っていいでしょう。だから、ほかの人より努力してきたとは思っていません。

楠木:ご自身ではそうお考えだということが、ふだん重松さんの言動を拝見しているとよくわかります。

重松:ただし、経営者としては、運のよさを全面に出すのはよくないです。失敗する可能性が高くなりますから。ある程度の準備はやっておかないと。実は、昔からセレクトショップって、誰でもできると思っていたのです。ちょっとした違い、商品の良しあしの違いがわかるだけで成立するんですから。それなのに、なぜみんなやらないのかと不思議に感じていたのですが、そのちょっとした違いがわかる人って、思いのほか少ないということに数年前に気がつきました。

楠木:数年前ですか(笑)。私も昔、もう嫌いなことはしないようにしようと、決めたことがありました。嫌いなことをすると、自分は何が好きなのかが、わからなくなると思ったのです。でも、そうして嫌いなことをしないようにしていたら、やることがなくなって、引きこもりになってしまった。ここが重松さんと大きく違うところです(笑)。

重松:よく、いちばん好きなものは残しておけ、とかいちばん好きなことは仕事にすべきではないとか言うけれど、全然そうは思いませんね。自分はいちばん好きなことからいちばん最初にするタイプです。

(構成:松岡賢治、撮影:今井康一)

楠木 建 一橋ビジネススクール特任教授

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くすのき けん / Ken Kusunoki

1964年東京都生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より一橋ビジネススクール教授。2023年から現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社+α新書)のほか、近著に『経営読書記録(表・裏)』(日本経済新聞出版)などがある。

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