白熱教室:灘高はリスニングをこう教えている 日本の英語教育を変えるキーパーソン  木村達哉(下)

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ありえない! CDなしのリーディング教材

リーディング教材でCDがないのはかなりきつい。読むというスキルしか伸ばしてやれない気がするのです。僕の授業はCD聞いて問題解いて、CD聞いて音読トレーニングやって、通しで聞いて……と、CDなしでは成り立ちません。リスニングしかやってないのに、これでリーディングのスキルはかなり伸びま す。リスニングのトレーニングをしたいがために、僕の解説時間はものすごく短いです。

だから、「授業見学に来ていいですか?」という問い合わせがあると困るのです。なんでかと言うと僕は授業中、教室の前でストップウォッチを押したり、ボーっとしている時間が大半だから。僕はあくまでもコーチ役なのです。

では、今日、お話したことのおさらいをします。単語は音声を使って、クイックレスポンス。発音をちゃんとできるようにする。音声習得語彙を増やす、 そしてクイックレスポンスができるようにする。問題をたくさん解いても、聞けないのはどうしてか? 単語を知らないからなのか、音のつながりのせいなのかを分析したうえで、トレーニングをしっかりする。

昨日行った学校の先生が「英語にとって大事なことは3つのPだ」とおっしゃっていたのです。3つのPとは何だかわかりますか? Practice, practice, and practice.です。この「3つのP」はいただこうと思いました。

リーディングにせよリスニングにせよ、速読みを習慣化させ、速読みをさせまくる。ただし、意味をとりながらやる。さらに、お手本となる音の確認をしっかりすることも徹底させます。読んだら聞く、聞いたら読むとね。

われわれが学習するときは、English Journalのような対訳になった雑誌というのがいい教材かもしれないですね。

僕は英語力がむちゃくちゃ高いわけでもないですし、授業が抜群にうまいということもありません。英語の偏差値は高かったにもかかわらず、34歳まではまったくできませんでしたし、人前で話すことなど到底無理でした。廊下で前からALT(外国語指導助手)が歩いてきたら、必ずすれ違う前に曲がるように していました。生徒が見ている前で英語を話すなんて離れ業はできませんでしたから。

自分の生徒たちはそうであってほしくないと思います。われわれもそうですが、特に今の生徒たち世代は、日本が抱えているさまざまな問題を、外に出て行って解決していく必要が出てくる。そんな難題を解決してくれる教え子が、いつか出てきてくれればいいなと思っています。

僕は最初に教えた生徒に「感謝はしているけれども、大学ではやり直しが必要」と言われて、ホントにショックでした。でも、それが変わるきっかけになりました。

今までは「あいつはホンマにアホや」「全然やらへん」と生徒のせいにしたこともありましたが、それは自分の教え方に問題があったんだと思うのです。私たちはプロなので、生徒の成績が低ければ低いほど燃えるべきでないかなという気がします。

彼らがしっかり英語ができるようになって、そして何年も後になってから「日本人は英語できるよね」と言われ、「日本人は英語がすごくしゃべれる民族やから」と言える国になればいいなと思っています。今日はどうもありがとうございました。

(構成:山本航)

安河内 哲也 東進ハイスクール・東進ビジネススクール講師

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やすこうち・てつや / Tetsuya Yasukochi

1967年福岡県生まれ。上智大学卒。予備校講師、教育関連機関での講演などで実用英語教育普及に従事。著書に『子どもの英語力がグンと伸びる最強の学習』(扶桑社BOOKS)など。

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