新幹線からコンビニまで、JR西日本の今後 来島達夫社長が語る「戦略」と「経営課題」

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――ドイツやフランスの高速鉄道はLCCや長距離バスに押されている。

新大阪―岡山間や岡山―広島間といった比較的距離の短い区間は、料金との兼ね合いで高速バスと競合する場面はあるが、長距離区間では高速バスとの競合は少ないのではないか。新幹線よりもむしろ在来線のほうで高速バスが脅威となっている。紀勢線を走る特急「くろしお」、京都と舞鶴方面を結ぶ特急「まいづる」などは、高速道路が整備されたのをきっかけに高速バスと競合している。

──ローカル線では島根県と広島県を結ぶ三江線を2018年に廃止すると国へ届け出た。赤字路線の廃止は今後も続くのか。

三江線以外に具体的な対象はない。鉄道としての維持を考えると三江線が最もシビアな路線だった。しかし、三江線に準ずる厳しいエリアも実際にあるので、そこをどうするかは考えなければならない。

──三江線は3年前の台風で被災・運休したが、JR西日本は翌年復旧・運転再開させた。そのまま廃止してもよかったのでは。

災害をきっかけに廃止するというのは、本来の交通網のあり方ではない。災害と利用者減による廃止は切り離して考えるべき。元に戻すべきものは戻したうえで、あらためてどのような交通手段がよいのか地元で議論してもらって、やめるべきものはやめるということだ。

コンビニ化で売上高が1.5倍に

コンビニ化した金沢駅ホームの売店

――視覚障害者のホーム転落事故が後を絶たないが、防止に向けてどのような取り組みをしているか。

まずは1日の利用者が10万人以上の駅から優先的にホームドア設置に取り組んでいく。それまでの間は列車の運転士、車掌、駅売店のスタッフなど、さまざまな従業員がつねに目配りをしていかなくてはいけない。

――運転士や車掌が視覚障害者に「声がけ」をしたら、列車の定時運行に支障が出るのでは?

でも、「あの人、おかしいな」と思ったら、駅員や運行指令に連絡することで不測の事態を未然に防止できる。視覚障害者だけでない。たとえばホームのベンチで寝ている人は、ちゃんと介抱しないと声をかけてあとにふらっと歩いてホームから転落するというケースもある。駅員を呼んで駅員に介抱してもらわないと。

――駅売店をセブン–イレブンに衣替えしている。効果はあったか。

確実に売り上げは増える。これまでのデータでは衣替え後に売り上げが1.5倍くらいにはなっている。

――利益はどうか?

残念ながら利益は売上の増加ペースに連動していない。セブン–イレブンのシステムを導入しつつ既存のシステムも使っているのでオペレーションコストがダブルでかかってしまう。だが赤字ではなく利益は出ている。なるべく早くシステムを一本化してよりよい効果を出したい。

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