ホンダ、米国での自動運転試験が新段階に 複雑な「市街地」想定

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 11月17日、旧米国海軍施設の敷地内。車は巨大な兵器庫群の脇を走り抜け、ドライバーの運転操作なしでゆっくりと信号のある交差点を右折した――。ホンダが次世代車開発の鍵とする自動運転技術の米国での走行試験は今、複雑な「市街地」を想定した新たな段階に入っている。写真は都内で昨年11月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

[コンコード(米カリフォルニア州)17日 ロイター] - 旧米国海軍施設の敷地内。車は巨大な兵器庫群の脇を走り抜け、ドライバーの運転操作なしでゆっくりと信号のある交差点を右折した――。ホンダ<7267.T>が次世代車開発の鍵とする自動運転技術の米国での走行試験は今、複雑な「市街地」を想定した新たな段階に入っている。

試験車両は高級ブランド「アキュラ」のセダン「RLX」。車の屋根にはカメラ3台を搭載。レーザーやレーダー、全地球測位システム(GPS)も備え、信号、白い車線や周囲の障害物などを認識して自動で走る。第1段階では時速約30―50キロでの走行実験を行っていたが、今は第2段階となる時速約100キロを中心にさまざまな場面を想定して実施している。

ホンダが試験を行っているのは、米カリフォルニア州サンフランシスコの東方約45キロにある「ゴーメンタム・ステーション」。地元の自治体(コントラコスタ郡)が運営する施設で、5000エーカー(約20平方キロメートル)という広大な敷地内に足を踏み入れると、まず出迎えてくれたのは放牧された無数の牛、群れをなして散歩する野生の七面鳥、駆け回る野ウサギやリスたちだった。

軍用施設だった過去の面影を残し、カムフラージュされたその倉庫群は、上空から眺めれば雑草の生い茂った平坦な土地のように見える。第二次世界大戦中には、この兵器庫から海岸に向けて弾薬や兵器が運ばれたという。軍人やその家族らがこの地にかつて暮らしていたため、街並みや線路もさびれて残ったままだ。

ホンダがこのほど記者団に公開したのは試験の一部で、1周約2.5キロのテストコースに新たに白線を引いたり信号を設置するなどして再現した交差点を右折するシーンだ。同社は高速道路での自動運転を2020年をめどに実用化する計画を打ち出しているが、米国での試験ではその先の技術となる市街地での走行性能や安全性を調べており、信号や交差点、歩行者や自転車に乗る人もいる状況を想定したものだ。

日産やトヨタも

自動運転をめぐっては、日産自動車が今年8月に高速道路での同一車線に限り自動運転ができる車を発売し、20年には一般道路での実用化を目指している。トヨタ自動車<7201.T>も20年に高速道路で自動運転ができる車の発売を計画するなど開発を強化している。20年ごろに市街地での自動運転実現も視野に入れ、試行錯誤を繰り返している。

「市街地での自動運転走行は(高速道路に比べ)難度が上がるため、その課題であったり、どのような解決方法があるかを研究している」。走行試験に携わっているホンダ・リサーチ・インスティチュート・USA(カリフォルニア州)のディビジョン・ディレクター、藤村希久雄氏はこう語った。 この試験場は、ホンダのほか、中国のインターネット検索大手の百度(バイドゥ)<BIDU.O>や自動運転ソフトウェアを手掛けるベンチャー企業の仏イージーマイルなども利用している。

 

(白木真紀 編集:北松克朗)

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