英語不要論者こそ「売国奴」だ 英語とITは子供の将来に必要不可欠

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帰国子女の角南さんは、アメリカで小学校に行き出した2年生のとき、向こうで広く使用されている「Raz-Kids.com」を使い、英語の勉強を始めた。「Raz-Kids.com」は、英語のナレーションに合わせて少しずつ難しい本を読んでいくことで、英語の本が読めるようになるというウェブ教材だ。そして、3年生からは、友達とWebサイトを作るのに熱中した。

そういう小学校生活を経て帰国した角南さんは、日本の学校に入って大きなカルチャーショックを受けた。アメリカではPCは教育に不可欠なツールなのに、日本ではまったく使われていないからだ。

安倍政権の戦略は生温い

角南さんは、そうした日米の教育の違いを次のように言っている。

「計算力がつくと、テストの順位が上がる。これは、測れる学力です。しかし、 発想の新しさやコミュケーション能力など、測れない学力もあると思う。日本の中高生も、いつかは学校を出て、社会に出て、世界の人と情報やアイデアを交換し合い、新しいものを作り出さなければならなりません。そのときに、ITを使いこなせなくて、はたして自立した大人になれるのでしょうか?」

「ITは、アイデアをかたちにする道具です。子供なら誰でも持っている『クリエイティブな発想や可能性』を広げてくれる、とてもためになるツールです。しかし、日本の学校が受験のための暗記学習に力点を置いているかぎり、ITが教室に入り込む余地はありません」

「テクノロジーの導入だけではなく、授業や試験のかたちそのものを改革しなければ意味がない。テクノロジーを学んで終わりではなく、テクノロジーをツールとし、興味があることを勉強したり、新しいことを作り出す教育が必要です。ITを使うか使わないか迷っている暇はないと思います」

これが、中学2年生の意見である。私たちは、将来の日本人を育てる教育について早急に対策を打たなければならない。そう思うと、安倍政権の戦略は生温いうえ、悠長すぎる。ほとんどの改革が5年先の話なのだ。

私は、こうした改革ですら反対し、英語不要論を唱える者こそ、子供たちの将来を考えず、この国を滅亡に導く「売国奴」だと思っている。

山田 順 ジャーナリスト

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やまだ じゅん / Jun Yamada

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年『光文社ペーパーブックス』を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に『出版大崩壊』『資産フライト』『出版・新聞 絶望未来』『2015年 磯野家の崩壊』などがある。

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