「銭荒」と、高めの金利を容認する政府 景気・経済観測(中国)

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 具体的には、すでに流動性不足に陥った一部の金融機関に対して流動性を供給して支えたこと、流動性の豊かな銀行に金融市場のスタビライザーとして資金を供給させたことが明らかにされ、これらの措置を通じてパニックを収束させたと中国人民銀行は述べている。

さらに今後についても、流動性を適時に調節すること、流動性管理に失敗した銀行が現れた場合には、金融システム「全体」の安定維持を重視し、しっかりと策を講じることが声明にはうたわれている。

銀行への融資規制をかいくぐる「理財商品」

しかし、システミックリスク回避を大前提としたうえで、中国人民銀行は銀行に対して流動性管理、資産負債管理の健全化も強く求めている。とりわけ「理財商品」に対する管理強化が目指されているようにみえる。

「理財商品」とは、小口の資産運用商品である。ここ数年で急速に財テク手段として人気を博するようになったが、その背景は次のとおりだ。中国の銀行は貸出残高を預金残高の75%以下に抑えなければならない(預貸率規制)。こうした中、銀行融資以外の資金調達手段として急拡大したのが、この「理財商品」のスキームである。

たとえば、銀行は債券、貸し出し、手形、信託商品などで構成される「資産プール」を小額投資可能な形に分割し「理財商品」として販売しているが、その利回りは、規制で金利が低く抑えられている預金よりも高い。それが個人投資家などを引き付けている。

他方、「理財商品」を通じて調達された資金は、不動産開発会社や「地方政府融資平台(インフラ建設などの資金を調達するために地方政府が出資し設立した会社)」など、規制により銀行融資が受けにくくなっている企業などにも流れている。ここに企業からみた「理財商品」のメリットがある。銀行からみれば、預貸率規制により貸し出しができないことで失われた収益機会を、「理財商品」の販売手数料で補うことができる。

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