「銭荒」と、高めの金利を容認する政府 景気・経済観測(中国)

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こうした環境下、6月6日になると、一部の中堅銀行が決済不能に陥ったとの情報が流れ始めた。それが市場の動揺を生み、SHIBOR翌日物は終値で6%近くにまで上昇した。さらには、6月19日になると、資金の出し手役を務めてきた大手商業銀行までもが資金の取り手に変わったとの観測が流れ、翌20日には中国銀行が決済不能に陥ったとの風評、中国工商銀行が中国人民銀行(中央銀行)から資金供給を受けたとのうわさまで飛び交った(中国銀行、中国工商銀行に関する風評については直後に間違いだと発表されている)。

市場の動揺は大きく、その結果、冒頭でみたように、6月20日にはSHIBOR翌日物が13.444%にまで上昇したのである。

それを契機に、中国の代表的な株価指数である上海総合指数が急落した。6月24日には前日比5.3%の大幅下落を演じ、27日まで下がり続けた。国債利回りの上昇や人民元安も起こり、一時はトリプル安の様相を呈した。中国の金融市場でパニックが生じていたといっても過言ではない。

金融市場健全化の好機ととらえた中国政府

こうした中、中国政府は、パニックの広がりによる金融機関の破綻とその連鎖による金融市場の機能不全(システミックリスク)を防ぐ一方で、この「危機」を金融市場健全化の「好機」ととらえて、インターバンク金利の上昇をそのために利用しようとしたように映る。こうした中国政府の姿勢が流動性逼迫の第3の理由だと考えられる。

6月25日に発表された中国人民銀行の声明から、こうした中国政府の姿勢が透けてみえる。この声明の中で、中国人民銀行はまず金融市場の安定維持を図っていることを強調した。

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