「トランプ共和党」は2018年までは安定する 吉崎氏、予想失敗の米大統領選を「後講釈」

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ところが投票箱を開けてみたら、「トランプ氏の当選、議会は上院も下院も共和党」とあいなった。なおかつトランプ氏は極めて落ち着いた勝利演説を行い、ヒラリーさんはとても感動的な敗北宣言を行なった。アメリカ社会はとことん分裂しているわけだけど、信じられないくらいに安定した結末となった。

「トランプラリー」の賞味期限はいつまで続くのか

政権政党が上下両院で多数を得るのは、2009年~2010年以来のことである。それはオバマ大統領の最初の2年間であって、ここで大型景気刺激策やオバマケア法案が成立した。共和党政権で最後にそうなったのは、2001年上半期の半年だけである。

ここではブッシュ減税が実現したのであるが、半年たったところでジェフォーズ上院議員が離党し、1議席差で上院が民主党優位に逆転してしまった。今回はそれ以来の事態である。なおかつ上院は共和党52対民主党48となったので、現在の与党優位は次の中間選挙まで丸2年は続く見込みである。この間、トランプ次期大統領は議会でいろんな法律を通すことができる。

しかもですな、投票日まで多くの人たちは「民主党政権はあと4年間続くよね」ということを前提としていた。そうなると合計12年間も続くわけであって、この間に金融や環境に対する規制がどんどん強化されることは目に見えていた。それはまあ「しょうがない」と思っていたのだが、それらがこの際、全部吹っ飛ぶことになった。久々にホワイトハウスに「プロ・ビジネス政権」が誕生しそうなのである。さらには、富裕層を含む減税をやってくれるかもしれない。いやはやウォール街としては笑いが止まらないではないか。

なおかつ、市場は「トランプ政権は財政拡張をやる」ということまで読み込んで、長期金利が2%を超えた。今みたいに世界中がイールドハンティングをやっているご時勢に、米国債の利回りが2%を超えるのなら、「黙って買え」というのが賢者の態度というもの。これでは新興国投資なんてやっていられない。

米国の金利が上昇するのであれば、当然ドル買い円売りである。今週の為替市場は一時1ドル109円台まで突入した。めぐりめぐって日本株も買い。「もしトラリスク」に怯えていたマーケットが、突然、「トランプラリー」に走り出したというのは、ある意味、健全な反応だと思うのである。

それではこの「トランプラリー」、賞味期限はどれくらいあるのか。「メキシコとの国境に壁を作る」など、無理目の公約はどんどん修正しているし、次期政権の閣僚人事も今のところは「まとも」な感じである。ここはひとつ、「先行き不透明」と受け止めるよりも、「変化は買い」と達観するのが良いのではないか。とりあえず開票から1週間に限って言えば、おみくじは「小吉」どころか「大吉」であった。

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