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元サッカー日本代表主将で現在はガンバ大阪ユースの監督を務める宮本恒靖氏は、一流のプロサッカー選手の要件として「高いレベルで集中力を発揮できること、コミュニケーション能力、自己管理能力」を挙げている。が、この指摘はビジネスパーソンにもあてはまるのではないだろうか。高いパフォーマンスを発揮するために、そして、よりよい自分になるためのヒントをもらいに、宮本氏を訪ねた。

新しいことを学ぶ喜び

プロサッカー選手として華々しいキャリアを誇る宮本恒靖氏だが、「サッカー人生では悔しいことの方がずっと多かった。だからこそ、つねに次は、今度こそはという思いで挑戦し続けることができた」と語る。現状に満足することなく新しいことを貪欲に学び、進化し続けてきた末に現在があると理解できる。

2007年、オーストリアのクラブに移籍した際、ドイツ語をゼロから学んだのもその一つだ。「新しいチームでポジションを獲得するためには、監督やチームメイトから信頼を得なければなりません。そのためにドイツ語でのコミュニケーション力は不可欠でした。それに加えてメディアと良好な関係をつくるなど、異国で自分をマネジメントするという点でも言語は重要でした」と宮本氏。クラブが提供したドイツ語レッスンに飽き足らず、自ら教師を探して個人レッスンを受け、ドイツ語を自分のものにした。

もちろん「必要に迫られて」という理由は大きいだろう。しかしそれにも増して「30歳を超えて新しい言語を学ぶことへの興味がありましたし、実際、単純に楽しかった」と語る宮本氏は「新しいことを身に付ける喜びが、挑戦の大きなモチベーションになっています」と続ける。

その姿勢は現在まで続いている。現役引退後の2012年、FIFA(国際サッカー連盟)がスイスのスポーツ研究国際センターと共同で運営するスポーツ学の修士課程プログラム「FIFAマスター」へ進学し、1年間の課程を修了した。「大変だったけれど、それ以上に知らないことを学ぶことが刺激的でした」と言うように、この時も宮本氏が抱いていたのは、「いつか日本サッカー界に貢献したい」という使命感だけでなく、学ぶことに対する純粋な喜びだった。

とはいえ課題やテストをクリアし、最後に共同研究で論文をまとめ上げるのは容易ではなかったはずだ。最後までやり抜く力はどこから湧いてくるのか。「結局は自分との闘いです」。そんな宮本氏の言葉は、強い精神力を持ったトップアスリートだからではなく、「自分に負けたくない」という気持ちが大きな達成につながるという自身の経験から生まれたものだ。「『明日の試合に勝ちたい』『日本代表に選ばれたい』。目の前の目標も、その先の大きな目標の達成も、今この瞬間、一見ささいなことに思えるパス練習一つにどれだけこだわれるか、その先にしかありません」。

最高のパフォーマンスを発揮するため、逆算する

宮本氏はまた、現役時代、自己管理を徹底することでも知られていた。毎朝起床後に心拍数を計測することから始まり、体重などを綿密に記録。試合前後の食事や睡眠時間にも気を配っていたという。そこまで徹底する理由を尋ねると、「心身ともにフレッシュな状態を保つことが、集中力を高め、ピッチでのよりよい判断、よりよいパフォーマンスにつながるから」と明快だ。「つねに、よりよい自分でありたい」という強い思いが伝わってくる。

「記録することで、わずかな体調の変化も捉えることができます。とりわけ重要なのは、試合でいいパフォーマンスができなかった時。その日の自分のコンディションを見返すことで、次のトレーニングやコンディションづくりに生かすことができます」

プロのアスリートといえども毎日、何年にもわたって自己を厳しく律するのは大変だが、宮本氏は「ルーチン化」することでそれを実践してきた。現役を退いた今もできる限り規則正しい生活を送り、定期的な運動を欠かさない。疲れているから、誘いを断りきれないから、ストレスがたまっているから、自分に課したルールを破る理由はいくらでもある。しかしどんな理由があろうとも、プロの世界ではピッチ上のパフォーマンスがすべて。自分の成果が評価されるという点では、ビジネスの世界も同じだ。「健康管理も、『準備』の一つ。すべては最高のパフォーマンスを発揮することからの逆算です」。

「記録する」ことの楽しみとは

仕事で成果を挙げるために健康管理が欠かせないのと同様に、自己管理の一環として「お金の管理」も不可欠だ。監督としてガンバ大阪ユースを率いる現在も、選手の日々のトレーニングメニューを記録し、指揮に生かしているという宮本氏は、お金の管理においても「記録する」ことで現状を把握することの重要性に同意する。

たとえば宮本氏も活用しているアメリカン・エキスプレスのクレジットカードでは、スマートフォンでカードの利用状況を手軽に確認できるアプリのサービスを提供している。スマートフォンでカードの利用履歴や支払いの最新情報をすぐに確認できるうえ、貯めたポイントを支払代金に充当できるなど便利なサービスもある。

「自分がいつ、どんなことにお金を使ったのか、後から正確に把握できるのがいいですね。ふだんは練習拠点であるスタジアムと自宅の往復で、高額の出費はほとんどありませんが、クレジットカードの利用履歴を見て、仕事で行ったイタリアでは『つい買い物をしすぎてしまったな』とかね」。記録を振り返ることで、さまざまな想い出が浮かび上がってくるといった楽しみもあるだろう。

実は、当初のタイトルは「年明けからはじめたい3つのこと」、だった。が、インタビューの中で宮本氏に指摘されてしまった。宮本氏は「思い立ったら吉日」が信条、すぐに始めるタイプだという。「来月からとか、新しいシーズンからとか、待つ必要はないのでは」と宮本氏。確かに、今から始めたいことは少なくない。

ビジネスの現場をはじめ、求められる場所で高いパフォーマンスを発揮するために、そして、よりよい自分になるために動き出すか否か。当事者の姿勢が問われているのだとも言えるだろう。

宮本 恒靖
ガンバ大阪ユース監督
サッカー日本代表として国際Aマッチ通算71試合出場。Jリーグ(J1)通算337試合出場。引退後はFIFAマスター修了。日本サッカー協会の公認S級コーチライセンスも取得している。