節約下手な人は「ときめき」で買い物している 「要・不要」と「今月の残金」を直視せよ

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また、クローゼットやタンスの中を、アイテムごとに色別に並べてみることもおススメだ。見事に黒ばかり、という引き出しが出来上がりでもすれば、「さすがにもう黒い服はいらないな……」と一目でわかるだろう。

本当に「オトク」なのは、店側かもしれない

そしてもうひとつぜひ、お伝えしたいことがある。それは、「3足1000円」など、複数買うと割安になると打ち出す売り方のものは、ムダになる可能性が極めて高いということだ。

洋服を買いに行って「3着買うと10%割引になりますよ」と言われたあなたはどうするだろうか? 1着をうつもりが、わざわざあと2着選んで合計3着を買っていないだろうか。

これでトクしたのは誰だろう。「好きな服を3着も買えて割引になったんだから、トクをしたのは自分」と思う人は、すでに「オトクのワナ」にはまっている。本当にトクをしたのは、あなたではなくて、お店だろう。1着しか買わない予定だった客に、3着買ってもらい、しかも3着分の在庫が減ったのだから。

本来1足あればいい靴下を、素直に1000円払って3足セットで買っているのも、知らないうちにそのワナにはまっていると言える。この「3」という数字が、曲者なのだ。欲しいものを2つ選ぶのは割と簡単だが、3つとなると悩ましい。さんざん悩んで選んだ3つ目のものは、本当に自分が心から欲しいものと言えるだろうか? このワナにはまらないためには、トクする金額ではなく、財布から出て行く金額を意識してほしい。1足の靴下代が350円なら、なにも650円も余計に払ってやる必要はないのだから。

オトク好き、節約好きがはまるワナはほかにもある。ポイント5倍デー、期間限定で付与されるポイント、次回から使える1ドリンクサービス券。どれもこれも、一見「おトクに買い物や食事ができる」というアメに隠された、おカネを使わせる仕組みだ。

おカネが貯まらないと嘆く人ほど、おトクと言われて、ちょこちょことおカネを使ってしまうもの。それこそが、おカネが財布からどんどん漏れて行く穴だ。

『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「おトク」は、いわばおとり。「おトク」を匂わせる言葉が出てきたらさっさと逃げるに限る。店でクーポンをもらったらすぐ捨てる、スタンプが貯まるというショップカードは断る、期間限定ポイントを進呈しますというメルマガは消す、1000円割引券つきのDMも会員限定バーゲンのはがきも見ないで捨てる。せっかく手にしたのに利用しないともったいない、と思わせるのが向こうの手。でも、そう思うのは一瞬のことで、それがあったことなどすぐに忘れるだろう。

割引やクーポンのために買うのではなく、欲しいものを買うために割引を使う。その順序を守ればさらに有意義な買い物ができるはずだ。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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