松下幸之助「派閥をつくる会社はダメになる」 経営の神様が問わず語りに語ったこと

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まあ、社員諸君は、自分も経営の成果を把握しておると、そういう気分になるんやな。そうすると、この会社は自分の会社だ、自分たちの会社であるという気持ちになる。自分が働いたことで、成果があがったということが、はっきりと分かる。そこに、働く喜び、生き甲斐というものも生まれ、一生懸命やるぞという熱意も生まれてきたんや。

またガラス張りの経営をするということは、経営者がいかなる不正も行ない得ないということにもなるわな。経営者自身の自己規制にもなる。ガラス張りの経営はいろいろな、思わん効果をもたらしたと言える。

そやな、全員で経営をしてきたのも、よかったかもしれんなあ。わしひとりで経営をやるということではなく、社員みんなで経営をやろうということを心掛けてきたな。いま言ったガラス張りで経営をしてきたのも、社員諸君の知恵を集めてきたのも、すべてこれ、全員で経営をしようとしてきたということやね。

事業部制にしても、そや。きみ、これを担当してやってくれ、そして一切の経営はきみがやってくれ。まあ、こういう主義やな。一人ひとりが経営を、わがこととして考える、一人一業、そういう考え方で取り組む。そういう環境を作ってきた。そやから、ワンマン経営ではないわけや、早い話が。時折、あんたはワンマンではないですかという人もおるけれど、まあね、そういう人は実態を知らんわけやな。とにかく、つねに社員一人ひとりを主人公にするようにして、仕事をしてきたんや。

会社は公のものである

そして、会社の仕事を公の仕事だと社員に訴え続け、理解してもらったことも、成功の要因のひとつと言えるわな。会社は個人のものではないですよ、わしひとりのものでもなければ、社員個人のものではないですよ、そういうことを言ってきた。

まあ、法律からいえば、私企業ということになるけれど、実際の姿から考えれば、そう考えんほうがええわけや。第一、会社をやっていくにあたって、なにが必要かと言えば、まずおカネやろ。おカネがなかったら会社、つくることもできんし、経営をしていくこともできんわね。けど、そのおカネというものは、誰のものでもない。「カネは天下のまわりもの」と言うけど、そのとおりやな。公のもんや。

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