【三淵啓自氏・講演】仮想空間「セカンドライフ」におけるコミュニティマーケティングの新たな可能性(その2) セカンドライフ成功のファクター4つのポイント 中編

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RoppongiBIZ*東洋経済提携セミナー
講師:三淵啓自(デジタルハリウッド大学大学院教授)
2007年12月4日(火)19:00~ 六本木アカデミーヒルズ

その1より続き)

●成功のファクター3 3次元のコミュニケーションツー

 3つめは、セカンドライフが3次元のコミュニケーションツールであるということです。一般のユーザー、マーケット市場、もしくは社会的なインパクトを考えると、実はこの部分が一番のポイントです。
 3次元でコミュニケーションできるツールはたくさんあるようで、実はこれまでほとんどなかった。電話もテレビも2次元、ウェブもそうです。映画では3Dのものが少しありますが、3次元のものを3次元としてお互いに共有できるツールはありませんでした。

 アバターになってお互いに話ができ、会議ができる。それで会社の効率があがるという点も3次元のコミュニケーションツールの大きなポイントです。
 例えばIBMでは、次期戦略の1つとしてメタバースがあり、メタバースを活用したビジネスの効率化、リスク管理、トレーニングという観点から、本格的に研究を始めています。バーチャル空間を使った仕事、会議がこれから普及していくだろうと戦略的に考えているようです。

 セカンドライフでは、人と人が会うという切り口のほかに、情報と人間のコミュニケーションも変わってくると思います。
 私たちは普段ヤフーやグーグルなどキーワードで検索するような情報空間に慣れ親しんでいます。パソコンはたいていファイルやフォルダがあり、ファイルを使って情報を特定しますが、パソコンのシステムがわかっている人にとっては当たり前のことでも、ほとんどの人にはピンときません。リアルの世界にはないものだからです。
 セカンドライフのような3次元空間では、ペットボトルは“もの”ではなく“情報”になります。リアルではペットボトルには水が入っているけれど、セカンドライフの中ではペットボトルの中に写真でも映像でも歌でもなんでも入れることができる。この情報には、形や色の情報と一緒にどこに置くかというメタ情報がついています。例えば、机の端に置くと不安定で落ち着かない感じになるというインパクトも含めてその情報自体を感覚的にやりとりできるようになる。このように情報空間と人間とのコミュニケーション、インターフェースというもの自体も変わってくると思います。

 またセカンドライフ自身のすべての情報はサーバーにあります。サーバーからリアルタイムにクライアントのソフトに流れこんできて、形や形状を再現し、2次元の画面に見せています。今はパソコンの2次元の画面だからわかりにくいのですが、3次元テレビや立体視メガネにつないだらどうなるか。そこにはパソコンよりもわかりやすい世界が広がっています。
 今後は、情報が見えるようになるという状況になっていくと思います。セカンドライフのこのあたりの可能性はまだ計り知れないものがあります。

その3に続く、全5回)
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