ドル円は112円台半ばまで行くかもしれない 日本株は短期的に「3つのリスク」に注意

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トランプ氏が当選前に掲げていた政策がすべてできるかどうかは別にして、個人・法人減税や規制緩和は、景気への影響を通じて株価に織り込まれます。他国と直接的に関係がある自由貿易協定をめぐる外交政策問題も、そもそも人種の違いや考え方が違うため、難しい問題に変わりありません。来年迎える米国の債務上限問題なども共和党主導で敏速に進めることが可能だと思います。ただ、共和党の重鎮であるマケイン上院議員やライアン下院議長などが選挙中、トランプ氏への支持を取り下げたことが尾を引く可能性はあるでしょう。

米国の長期金利による「副作用」が出るか?

これらの問題は、いずれ市場が織り込んでいくことになるのですが、その前にまず警戒しなければいけないのは、短期的なおカネの流れです。

私は少なくとも以下の「3つのリスク」を警戒しなければいけないと思っています。足元の米長期金利の急上昇で新興国からの資金流出が加速し、新興国の通貨や経済に大きな悪影響を及ぼす2)米長期金利上昇で、たくさん米国債を持っている中国の外貨準備高が中国のわがままでどのように変化していくか、3)米国を中心に先進国の債券市場に混乱が起きないかどうか、などです。

債券から株式への「グレートローテーション」(安全資産からリスク資産へ移る)があるといえども、金利上昇が緩やかならいいのですが、スピードがあまりにも早いと、あとで待ち構える、株・債券・為替市場の反動(混乱)を経験しなければいけません。

金利上昇は、結局のところ米国株の上値を抑える要因になるし、ドル高は米国景気の足かせになります。例えば、短期的に気になるポイントとしては、FRB(連邦準備制度理事会)による利上げがあります。12月のFOMCまであと約1カ月あります。

表面的に見れば、リスクオンになっている株式市場を横目に利上げがやりやすくなったような気もします。しかし、もし足元のリスクオンの反動や新興国からの資金流出が加速する状況になった場合、利上げできなくなることだって、ありえる話です。今、市場が予想する12月の利上げ確率は10日現在で81%です。実は、大統領選挙の結果を受けても、利上げ観測にほとんど変化はありません。これはなぜでしょうか?

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