名将に学ぶ、メディアを味方につける技術 グアルディオラ、スコラーリの伝える力

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スコラーリは2002年の日韓W杯でブラジルを優勝に導いた名将だ。メディアに対して、「おまえたちがスター扱いするせいで、ネイマールにプレッシャーがかかっているんだ」と上から目線で忠告することもできただろう。たとえばフランス人のフィリップ・トルシエは、日本代表の監督時代、しばしば「選手をスター扱いするな!」と会見で怒りを爆発させていた。

だが、スコラーリは孫子の兵法書を愛読するほどの戦略家である。むやみにメディアを敵に回さず、ブラジルの勝利を願う一員としての“仲間意識”を喚起し、協力を呼びかけたのだ。

その翌日、ネイマールは日本戦に先発すると、開始3分で鮮やかなボレーシュートを決めた。すると公式戦9試合無得点だったのが嘘かのように、続くメキシコ戦、イタリア戦でもゴール。監督の期待に応えた。

ネイマールほどの選手であれば、メディアがどう騒ごうと実力を発揮したかもしれないが、監督の一言に勇気づけられた部分はあったに違いない。一方、メディアも批判の矛先を鈍らせることはないだろうが、勝敗に影響を与えうる立場であることを、あらためて自覚したに違いない。人心掌握という点で、やはりスコラーリには特別な力がある。

記者会見が”公開授業”に 

スペインきっての名将、ペップ・グアルディオラも、メディアを味方につけるのがうまい監督だ。

このバルセロナを欧州王者に2度導いたカリスマは、今季、ドイツのバイエルン・ミュンヘンの新監督に就任。6月24日、ミュンヘンのアリアンツアレナで初の記者会見を行った。

すでに「休養先のニューヨークで、ドイツ語を1年間猛勉強していた」と報道されており、グアルディオラがドイツ語で記者会見に臨むことを多くの人が予想していた。しかし、これほどまでに愛嬌たっぷりに登場するとは、誰も想像していなかっただろう。

グアルディオラは記者会見の場を、ドイツ語の“公開授業”に変えてしまったのである。

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