東電は「超官僚的組織」から脱却できるか? 改革派が主要ポストに 東電、大胆人事の思惑

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今期黒字化は望み薄

もっとも、東電が置かれている状況が厳しいことには変わりない。

同社は昨年4月末、将来的な道筋を示す「特別総合事業計画」(総合計画)を策定、14年3月期には営業黒字化を達成すると発表していた。が、これはあくまで柏崎刈羽原発7基のうち4基が今年4月から順次再稼働した場合の数字だ。

原発再稼働をめぐっては、7月上旬にも新たな規制基準が施行される。電力各社はこれに伴って原子力規制委員会に審査申請を提出するとみられている。ただ、柏崎原発の場合、立地する新潟県の泉田裕彦知事が原発事故の検証を優先するよう求めていることもあって、今回は申請するかどうかは不透明だ。

コスト削減や資産売却は計画を上回るペースで進んでいるものの、除染や廃炉の費用も先行きは見えない。東電は昨年11月、こうした費用が10兆円に膨らむとして政府に支援を求めたが、政権が民主党から自民党に代わってもこの要請への政府からの反応はない。

柏崎原発の再稼働が先送りとなり東電単独で除染などの費用を負うことになれば、今期の営業黒字化は難しい。すでに東電は過去2期に巨額の純損失を計上しており、これが3期連続となれば、黒字化前提で融資を行っている金融機関が貸し渋り、東電が資金繰りに窮する可能性も出てくる。

大刷新人事でテイクオフを図る新生東電だが、越えるべきハードルは依然として高い。

週刊東洋経済2013年6月29日

歳川 隆雄 『インサイドライン』編集長

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1947年生まれ。週刊誌記者を経て1981年からフリージャーナリストに。現在は国際政治経済情報誌『インサイドライン』の編集長。
 

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