元祖"日本式"リッツ・カールトンの魅力 従業員たちまでも魅了する、もてなしの心

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リッツを際立たせる特徴のひとつが、「ゴールド スタンダード」と呼ばれる、全世界のリッツ従業員が共有する理念・価値観だ。クレド(信条)、モットー、サービスの3ステップ、さらにサービス・バリューズ、第6のダイヤモンド、従業員への約束、などから構成されている。
特に有名なのがクレドの文言だ。心のこもったもてなしと快適さを提供することを”使命”とし、最高のパーソナル・サービスと施設を提供すると「約束」している。また、紳士・淑女である顧客へサービスする従業員もまた紳士・淑女であるべきとしている点が出色だ。
リッツの姿勢を言明した「ゴールド スタンダード」を網羅したカードは、全従業員がつねに携行している

――改めて、リッツの接客姿勢である「ゴールド スタンダード」について教えてください。

それには、私自身のことを少し話させてください。なぜなら、それがゴールド スタンダードにすごく紐づいているからです。

私はザ・リッツ・カールトンで17年間働いています。1996年、24歳のときに働き始めました。その当時はまだ若かったので、将来の自分自身について何もクリアではなかった。けれど、ひとつだけはっきり考えていたのは、「3年経ったら辞めちゃうだろう。どうせ退屈だろうし」ということ。でも、17年経った今でも転職せずにずっと働き続けている。

――お仕事はリッツ一筋なのですか?

スペインのホテル会社に勤めてからリッツですが、17年間辞めなかったのは、「ゴールド スタンダード」の哲学のためです。私にとって、クレドや従業員への約束など、ゴールド スタンダードに規定されている価値観がとても重要なものでした。信頼や誠実さといった接客姿勢、それがいまだにここで働き続ける理由なのです。

権限委譲を進める理由

私にとって、もうひとつの辞めない理由はエンパワーメント、権限委譲が確立されているということです。ザ・リッツ・カールトンでは、スタッフの全員が自分で決断して行動する権利があります。自分自身が責任を持って判断を下せることによって、お客様に迅速なサービスをお届けできるのです。

接客の現場で何かがあったときに、マネジャーや上役にいちいち確認していては、お客様をお待たせしてしまう。ですから、そのサービスに当たった従業員本人が、本当にお客さんにとってよいことは何かを瞬時に自分で判断して、それを提供しても良いと言われているのです。それが私たちの重要なカルチャーのひとつであって、私を引き付けてやまないのです。

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