働く人を追い詰める「過剰品質」というワナ

再配達や年中無休の「代償」

同ホールディングスによると、1月2日を休業にしたことで、社員や出店企業の販売員3万人弱が休めたという。昨年までは初売りの準備で元日も出勤する人がいたが、そんな人たちも休めた。社員や販売員からは「百貨店に入った以上、お正月はないと思っていたのでうれしい」「1月3日の初商いはやる気を持って臨めた」という声が寄せられたという。顧客からのクレームもなく、1月2日の売り上げが8店舗でゼロになったにもかかわらず、1月全体の売り上げも前年同月比でプラスだった。

来年は1月2日に休む店舗を首都圏では9店舗に増やし、全国でも新たに札幌、名古屋など6店舗の休業が決まっている。

オーストリアに住む団体職員の女性(51)は3年前に渡欧した当時、ほとんどの店が日曜に営業しないことや、不在の場合は宅配物を自分で取りに行かなければならないことに戸惑った。でも、慣れるとそう困ることではなかったし、日曜日に公園でくつろぐ家族連れを見ると、

「あの人もスーパーの従業員かもしれないな」

と、自分も幸せな気持ちになるようになったという。

「サービスを提供してくれる人にも生活がある。それを尊重しようと思えば、期待するサービスが受けられなくても不快だと思わなくなりました」

電通の新入社員の女性の過労自殺が労災認定された翌月、あるブログが話題になった。筆者は約15年間、コピーライターとして電通に勤務し、昨年退職した前田将多さん(40)。「広告業界という無法地帯へ」と題して、

「恐ろしいのは電通でもNHKでも安倍政権でもない。どこにでもいる普通の人たちだ」

と書いた。

相手の時間を奪わない

電通が午後10時以降の残業を禁止したことについては、

「クライアントは容赦なく『あれしろ』『これもしろ』『明日までに』『朝イチで』と押し付けてくる。どうすればいいというのだ」

前田さんは電通にいたころ、ある企業の幹部に、「出演する女性の帽子が気に入らない」とでき上がったCMの撮り直しを求められたことがある。衣装はすべて事前にチェックを受けていたし担当者には撮影にも立ち会ってもらったのに。意味のある仕事なら長時間労働も苦ではなかったが、納得できない仕事で徹夜するのは苦しかった。

前田さんは自戒も込めて言う。

「クライアントは『神』とされ、現場の社員や協力会社のスタッフはむちゃな要求に非人間的な努力で応えている。でも、彼らも人間です。何げない要求が相手の時間を奪い、追い詰めることがある。みんな、そのことを想像してほしい」

(編集部・深澤友紀)

※AERA 2016年11月21日号

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