ホンダの夢が詰まった新型「NSX」工場の全貌 スライドショーで見る超高級車の作り方

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NSXの生産に携わるのは難関の選抜試験を突破した熟練工たちだ。米国ホンダの生産技術を知り尽くした、勤続20年ほどのベテランエンジニアたちが集められている。

オハイオ工場の従業員約6000人の中から立候補者を募り、書類審査を通過した約1200人がペーパーテストや認知テストでふるいに掛けられる。さらに面接試験で絞り込み、NSXの生産要員として約100人が選抜された。3か月を要したというこの選抜作業が、「NSXのプロジェクトを始める上で最も難しかった」(NSX生産責任者のクレメント・ズソーザ氏)という。

熟練工と最新鋭ロボットがコラボ

こうして選ばれた熟練工の手作業と最新鋭のロボットによって、NSXは1台あたり約10日間かけて作られる。最も時間のかかるのが、塗装工程だ。塗料を11層にも塗り重ねた上に仕上げ処理を加えることで、ムラのない美しい表面に仕上げている。塗装工程の40%はロボットが、残り60%は手作業で行われるが、色を塗布するのに2日間、その後塗料を硬化させるための処理に2日間かかることから、塗装だけで10日間のうちの4日間を占める。

部材をつなぎ合わせて車の骨格を作る溶接工程は、すべての作業を8台の溶接ロボットが行う。溶接が必要な個所は860か所にも及ぶという。360度回転する車体冶具を活用し、ロボットのアームが溶接すべきポイントに狙いを定めるため、人間よりも精緻に溶接することができる。

NSXの量産が始まったのが今年4月。今年8月時点では1日当たりの生産台数が4~5台とフル稼働ではなかったが、生産が安定してきたことから、この10月末には以前の倍近い1日当たり8台に達している。

「NSXは4台から5台に日産台数を増やすだけでも25%の能力増になる。1台増えるだけでも大変だった」とPMCのマイク・フィッシャー工場長は振り返る。年間生産台数は1500台を目指す。

初年度の販売は北米で800台、日本で100台を計画している。16年5月24日に第1号車を米国で納車して以来、10月末時点でカナダを含めた北米には280台、グローバルでは326台を出荷した。国内でも出足は好調で、すでに翌年分含む200台を受注。2017年2月末から順次納車される予定だ。

初代NSXの登場から25年、先代モデルの生産終了から約10年の時を経て復活した新型NSXは、国内生産の先代とは異なり、オハイオの熟練工の手で作られた。開発の中心もオハイオにあるホンダの研究開発拠点が担った。こうして生まれたスーパーカーは、米国ホンダの歴史に新たな1ページを刻もうとしている。

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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