セレクトショップは好き嫌いで経営できる? ユナイテッドアローズ 重松会長の好き嫌い(上)

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好きなことしかやってこなかった

楠木:私はこれまで何度か重松さんにお会いしてきましたが、いつも感じるのは、起業家によく見られるアグレッシブな雰囲気がないことなのです。ガンガン商売するぞ、といった雰囲気がほとんどない(笑)。

重松:確かにそうかもしれません(笑)。

楠木:そういう人が、なぜここまで会社を大きくできたのか。経営の実績をみると、上場するし、成長志向で、セレクトショップ業界の中でも最も「ガンガン系」の経営者であってもおかしくないと思うのですが。

重松:そういう雰囲気がないのは、今まで、基本的には好きなことしかやってこなかったからではないでしょうか。好きなことをやっていたら、いつのまにか売り上げが付いてきた、というのが正直な感想です。おそらく、おカネを儲けようと利益を追求していたら、売り上げは付いてこなかったと思います。ストック商品のことでも、商売っぽいと言われたらそうかもしませんが、自分の感覚としては、そういう商品を作るのが好きというのが、まずあるんですね。

楠木:ビームスを辞められたのも、自分の好きなことができなかったから、と言われていますね。

重松:私は、過去2回転職をしていますが、いずれも好きなことができなくなったからです。最初に勤めた婦人服のアパレルメーカーは、仕事は面白かったのですが、自分が着たい服を売りたいと思うようになって辞めました。ビームスを辞めたのは、ファッション以外のアイテム、具体的には「衣食住遊知」というライフスタイル全般にわたる商品を取り扱いたい、という気持ちが強くなり、新会社を立ち上げたのです。ずっと、自分の好きなことをやってきたのです。

(構成:松岡賢治、撮影:今井康一)

※ 対談(下)に続く

楠木 建 一橋ビジネススクール特任教授

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くすのき けん / Ken Kusunoki

1964年東京都生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より一橋ビジネススクール教授。2023年から現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社+α新書)のほか、近著に『経営読書記録(表・裏)』(日本経済新聞出版)などがある。

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