「トランプ相場」はいったん終了の懸念がある 長期では米国株も米ドルも上昇の可能性

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そもそも為替相場については、トランプ氏の姿勢が米輸出産業の雇用を守る、という立ち位置であるため、米ドル高けん制はたびたび行なわれるものと懸念される。

金融業界の規制緩和が成るかどうかも、注目される。2008年のリーマンショック時の反省に立って、ボルカールールなどにより、金融機関の自己資金運用などを縛ってきたのが、オバマ政権の基本路線だった。

トランプ氏はこうした規制を緩める方向だと表明しているため、直近では、市場は金融株などをはやし、買い上げる動きを示している。

不満の矛先が向かいやすい金融界に肩入れできる?

ただし、トランプ氏が支持された背景には、格差に対する不満があることを忘れない方がいい。

格差に対する不満の矛先は、2011年の「ウォール街を占拠せよ」の運動にも表れていたように、金融証券界に向かいがちだ。こうした世論を背景として選ばれたトランプ新大統領が、金融・証券界に肩入れするようにみえる政策をとることができるかどうか、個人的には大変疑問視している。

もし筆者の見立てが正しければ、金融株は反落を余儀なくされるだろう。また、現在の米国株式市場全般に、金融証券界の運用規制緩和により、リスクマネーが大いに流れ込むという期待があるのなら、それも裏切られる恐れが強い。

以上のように、トランプ新政権下の米国株式市場や米ドル相場、あるいはそれを投資環境とした日本株などの行方については、長期的には楽観しているものの、当面は警戒姿勢を解くべきではないと考えている。

さて、今週の国内株式市況だが、市場を大きく左右するような材料(イベントや経済指標など)が見出しにくい。前述のような、トランプ新政権の今後の経済政策についての思惑に、日米の株式市況や米ドル円相場が動かされる展開となろう。

今週の日経平均株価は、足踏み色を強めると考え、レンジとしては、1万7100~1万7600円を予想する。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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