トランプ政権の威力をあなどってはいけない 「良いトランプ、悪いトランプ」を考える

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もちろん、すべてが前向きな話ばかりではない。意識しておくべきリスクは存在する。

第1に、短期的にはトランプ氏の経済政策によって景気が刺激された場合でも、好調な状態が続くとは限らない。減税や歳出増については、その規模を常に大きくし続けるわけにはいかない。成長率を押し上げる効果は、次第に小さくなっていく。

一方で、景気の過熱がインフレ率の上昇を招けば、FRB(米国連邦準備制度理事会)による利上げの速度が早まり、景気を冷やす力が働く。株価等にバブルが生じているような状況だとすれば、それがはじけた後の落ち込みは大きくなろう。さらに、財政赤字の拡大を引き金に、米国の長期金利が急速に上昇し、ドル高が急速に進むような展開となれば、米国経済はもちろん、グローバルな金融市場にとっての波乱要因になり得る。

保護主義でサプライチェーン分断のリスク

第2に、そもそも、「良い公約」だけが実行される保証はない。トランプ氏の公約には「悪い公約」も含まれている。大統領としての「資質」を巡るトランプ氏の疑念と同様に、トランプ氏の公約についても、「良い公約」だけが生き残ると考える材料は、現時点では十分ではない。

「悪い公約」の典型は、保護主義的な通商政策である。日本の立場からは、どうしてもTPP(環太平洋パートナーシップ)からの撤退に関心は集まるが、それは氷山の一角に過ぎない。トランプ氏が関税の引き上げ等の保護主義的な政策に傾けば、諸外国が報復措置に走るリスクが生ずる。

NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しや、メキシコからの輸入品の一部に高関税を設けるなどの政策が実現した場合には、米国、カナダ、メキシコを一体としてサプライ・チェーンを形成してきた米国企業は、事業戦略の見直しを迫られる。

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