「客は二の次」のフランスに日本が学ぶべき事 スーパーが日曜定休でも本当は誰も困らない

拡大
縮小

電車に乗り込んでからも、一部の路線を除いて、次の停車駅を知らせるアナウンスはない。乗り過ごさないように、乗客側はつねに気をつけていなくてはならない。当然、「発車間際の乗車はおやめください」とか「傘の忘れ物が多くなっております」などというアナウンスもない。これも、乗客自身で注意するべきだということなのだろう。

TGV(フランスの高速鉄道)にパリの始発駅から乗り込むときも、いつも戸惑う。出発する電車のホームが何番線なのか、発車20分前になるまでわからないからだ。バカンスの時期などは、掲示板に出発ホームが表示された途端、大勢の乗客がスーツケースをゴロゴロとひいてホームに向かう。あいにく予約していた席が先頭車両だった場合、長いホームを歩いて乗り込むのは、どうしても発車ギリギリの時間になってしまう。

路線バスの場合は、さらに最低限のサービスしか施されない。時刻表は、「何時から何時までは、7分間隔」というような大ざっぱなものだ。乗客は、降りたい停留所に着く前に、車内にあるボタンを押して知らせる。電車と同様、次に到着する停留所のアナウンスがない路線も多いので、乗客は降りる場所が近くなったら、通り過ぎる停留所の名前をよく見ておかなくてはならない。

「とにかく客が働く」フランスのスーパー

お店での買い物も、店側は「お客様は神様」とはこれっぽっちも思っていない。スーパーのレジは、レジ係がかごから商品を出してレジを通し、かごにきれいに入れ直すのが一般的な日本と比べたら、驚くほどのサービスの悪さだ。客はベルトコンベアーのように動く台に、購入したい品物をかごから出して置く。すべて出し終わったら、「次の客」と記された仕切りを台に置く。そして、素早くレジに隣接した袋詰めのスペースに移動する。

レジ係は何をしているかというと、ベルトコンベアーを動かして悠々と品物をスキャンし、袋詰めのスペースへ置くだけだ。なお、スーパーや商店のほとんどは日曜日が休みなので、客は計画的に買い物をするよう心がけている。

2016年の夏に訪れた際にも、午前中にブティックで買い物をしようとしたところ、こんなことがあった。10時過ぎに、「開店は10時」と書かれていたとあるブティックに入ろうとしたところ、ドアに鍵がかかっていて開かないのだ。立ち去ろうとすると、後ろで物音がする。

振り返ると、店員が内側からドアのカギを開けているところ。どうやら、開店は10時で違いないのだが、最初の客が来るまでドアは閉めておく習わしのようだった。早く開店させてしまい、申し訳ない気持ちになる。

次ページ「新商品開発」しなくても売れ続ける理由
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT