日本人は、「トランプ大統領」を甘くみている 過去の「トンデモ発言」には信念がある

✎ 1〜 ✎ 20 ✎ 21 ✎ 22 ✎ 最新
拡大
縮小
「トランプ大統領」誕生で、米国と日本、アジア諸国との関係はどう変わるのか(写真: Carlo Allegri/ロイター)

ドナルド・トランプ氏が米大統領選で衝撃的な勝利をはたしてから3日。安倍晋三首相がトランプ氏と電話会談し、米ニューヨークで現地時間17日に会談することが決まった。「緊急会談」の目的は明らかにされていないうえ、政権移行の準備も本格化していない中での会談がはたして良いアイデアかどうかもわからない。ただ、ひとつだけハッキリしていることがある。今回の会談を通じて安倍首相が、米国でいったい何が起きているのか、そしてこれが日米関係にどう影響するのかを知りたがっているということだ。

トランプ氏の勝利は、民主党、エリート層、さらには共和党員の多くが大敗を喫したというような単純な話ではない。それよりも衝撃的なのは、同氏の当選により、冷戦以降二大政党共通の外交政策の柱となってきた、介入による国際協調主義が明確に否定されたということだ。

「米国は日本にやられてばかりだ」

この緊急特集の一覧はこちら

2015年6月16日にトランプ・タワーで行った立候補表明の冒頭から、トランプ氏はグローバルな自由貿易システムや、欧州、アジアでの同盟体制の堅持、独裁政治への反対といった国際協調主義の根幹部分のいくつかをやり玉に挙げていた。

インタビューや演説、討論会、さらにはツイートに至るまで、トランプは繰り返し自らの世界観、すなわち孤立主義へと至るナショナリズムを明確に表明していた。排他主義や人種差別ともとれる言動の対象は、メキシコ人にかぎらず、イスラム教徒、アジア系、最終的にはすべての「外国人」に及んだ。11月8日には相当数の米国人がこのイデオロギーを受け入れ、トランプ氏に票を投じたのである。

さて、「トランプ大統領誕生」は日本にとって、さらにはすべてのアジア諸国にとってどういうことを意味するのだろうか。それを知るにはまず、トランプ氏の立候補表明演説を思い出してもらいたい。

「わが国は深刻な事態に陥っています。米国はもはや負けてばかりです。以前は勝っていましたが、今は違います。米国が最後に勝ったのはいつのことでしょうか――強いて言えば、中国と貿易協定を結んだときでしょうか。米国は中国のせいで破綻しています。私はつねに中国をたたいています。ずっとです。米国が日本に勝ったためしがあるでしょうか? 日本は何百万台単位で(米国に)自動車を送り込んで来ますが、それに対して米国はどう対処しているでしょうか。東京をシボレーが走っているのを最後に見かけたのはいつでしょうか。皆さん、シボレーは消えたのです。米国は日本にやられてばかりなのです」

次ページ米国の外交政策関係者がやっていること
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT