トランプ勝利は米国社会の病弊を映し出した 勝利後に「団結」をアピールも、分断は深刻化

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トランプの政界への登場は米国社会の分断をあらためて浮き彫りにした。

クリントンを支持したニューヨーク在住コンサルタント、アイビー・コーエンは、「移民との対立拡大など、トランプは二極化と分断を生む人物。今後、米国の分断はますます深刻化していくだろう」と悲嘆する。

ニューヨーク・タイムズ(11月3日付)によると、投票日前に同紙とCBSニュースが行った調査で、大多数の有権者が米政治の現状にうんざりし、歴史に残る醜悪な選挙戦が展開された後では国を一つにまとめるのは難しいと答えたという。また、共和党員の85%は、党は分断されていると考えている。

金融市場も動揺

「次期大統領は、大きく分裂した国を引き継ぐことになり、国を治めるのに苦労するだろう。第3党が台頭する可能性もある」と、ジェノビースは見る。

トランプは9日未明の勝利宣言で、一転して「団結」をアピール。ポピュリスト(大衆迎合主義者)としての変わり身の早さを見せた。

金融市場においては、トランプ優勢が伝わり、日経平均株価は920円安の大幅下落に見舞われた。が、その後に取引を開始した米国NYダウは256ドル高と上昇するなど、想定外の状況に評価はまだ定まっていない。

視界不良の中、米国はどこへ進むのだろうか。

(文中敬称略)

肥田 美佐子 ニューヨーク在住ジャーナリスト

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ひだ みさこ / Misako Hida

東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身ニューヨークに移住。アメリカのメディア系企業などに勤務後、独立。アメリカの経済問題や大統領選を取材。ジョセフ・E・スティグリッツなどのノーベル賞受賞経済学者、「破壊的イノベーション」のクレイトン・M・クリステンセン、ベストセラー作家・ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルやマイケル・ルイス、ビリオネア起業家のトーマス・M・シーベル、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長(英国)など、欧米識者への取材多数。(連絡先:info@misakohida.com)

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