野球選手に学ぶ、"オリジナル技"の開発法 潮崎哲也はなぜ魔球シンカーを習得できたのか?

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その子のレベルまで行かせてあげたい

目標を明確に定め、ゴールに到達するまでの道を探っていく。逆算のイメージで“魔球”を習得した潮崎は現在、同じような考え方で若手投手を鍛えている。

今季の西武には、育成選手を含め34人の投手が在籍している。潮崎が念頭に置いているのは、彼らの能力は千差万別であるということだ。

「プロ野球に入ってきても、『この子は1軍に行けるかな?』という子もいるんです。もちろん『こいつはすごいな』というピッチャーもいる。だから、その子のレベルに合ったところまではちゃんと行かせてやりたい。『将来は先発ローテーションに入るピッチャーやな』と思えば、ローテーションまで行かせてあげる。『そこまで行くピッチャーじゃない』と思えば、何とか1軍に入れるようなピッチャーにしたい」

現在、潮崎が面白い変化球を投げると思う若手のひとりが、2012年ドラフト5位で光南高校から入団した佐藤勇だ。

「左からいいチェンジアップを投げますよ。ストレートとの連動性がないから、まだダメですけどね。ストレートと見間違うような腕の振りやボールの軌道にできたら、いい球になると思います。今は大したことないですよ。でも、可能性はある。真っすぐが速いわけではないけど、落ち着きやプレートさばきという部分でピッチャーとしての雰囲気を持っている。先発として伸ばしてあげたいタイプのピッチャーですね」

人の能力には限界がある。一方で「適材適所」と言われるように、適した場所に配置してやれば、持てる能力を存分に発揮できる確率が高くなる。そう考えると、選手の可能性を最大限に引き出してあげるのが指導者に求められる役割だ。

シンカーという“魔球”でトップに登り詰めた潮崎は、現実を冷静に見つめつつ、人の可能性を信じながら明日の戦力を育てている。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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