トヨタ「アルヴェル」高級ミニバン独走のワケ 愚直に貫いた日本流がライバルを圧倒した

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ホンダ エリシオン

ホンダがエリシオンを発表したのは、この間の2004年のことである。アルファードと同じ横置きエンジン前輪駆動が基本となっていたが、デザインはクラウンに対するレジェンドと同じように、シンプルでスマートな造形だった。

わが道を行くという点ではホンダらしかったものの、このクラスのミニバンを買う顧客にはあまり響かなかった。そこでホンダはプレステージという追加車種を発表する。こちらは大型フロントグリルやリアコンビランプで豪華さをアピールしていた。それでもトヨタと日産の牙城を崩すことはできず、2013年に販売を終了。ホンダはこのカテゴリから撤退を余儀なくされた。

現行型エルグランド

一方、2010年には、エルグランドが現行型にモデルチェンジしている。

エルグランドはこれまで、縦置きエンジン後輪駆動にこだわってきたが、ここでアルファード/ヴェルファイアと同じ横置きエンジン前輪駆動ベースに切り替え、欠点とされた車体の重さを軽減し、2.5リッターエンジンをV6から4気筒に切り替えることで燃費も向上した。それでもアルファード/ヴェルファイアとの差は縮まらなかった。

エリシオンと現行エルグランドの共通点

実はエリシオンと現行エルグランドには共通点がある。前輪駆動化を生かしたフロアの低床化にこだわり、それに合わせて全高をアルファード/ヴェルファイアより約100mm低い1.8mレベルに抑えていたことだ。ハンドリングの向上が目的だった。エルグランドは相変わらず大きなフロントグリルを据えているものの、面構成はエリシオンともどもスムーズだった。

クルマ好きなら間違いなく、エリシオンや現行エルグランドの方向性を支持するはずだ。しかしこのクラスのミニバンを好む層は、何よりも大きく豪華に見えることを重視する人が多い。アルファード/ヴェルファイアはその価値観に合致したクルマづくりを行うことで、主役の座を磐石にしてきたのだ。

輸入車の2台についても同じことが言える。確かに高速道路での走行安定性は良いし、ダウンサイジングエンジンは長距離走行で好燃費を出す。しかし機能重視のシンプルなデザインは、アルファード/ヴェルファイアの方向性とは明らかに異なる。これでは劣勢は免れない。

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