安倍政権の正体 ー秘められた本心と人脈ー 出そろった安倍流「3本の矢」の実力は?

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フェイスブックを駆使 世論へ機敏に反応する

何より大きな変化は、世論の動向を敏感に察知して軌道修正を図る姿勢だ。よくも悪くも理念重視で行き詰まった前回とは、別人のような柔軟さを見せている。

その一例が、妊娠の知識普及を図った「女性手帳」配布構想だ。少子化対策の一環という位置づけだったが、「結婚・出産という選択の押し付け」と猛反発を買った。すぐにこの構想は白紙化されたが、それには安倍首相のフェイスブックに「女性手帳」を批判するコメントが相次いだことがきっかけになった。

もちろん多忙な首相本人が全部見ているわけではない。チェックしているのは、官邸スタッフだ。彼らの報告から、安倍首相は自分の発言や政策への世論の反応を知る。これまでなら、「メディアの偏向」で片付けていた批判にも、敏感に反応するようになった。

官邸スタッフの中核は、経済産業省から出向している首相政務秘書官の今井尚哉氏(1982年入省)と同じく事務秘書官の柳瀬唯夫氏(84年入省)。それぞれ第1次安倍政権と麻生太郎政権で首相秘書官を務め、官邸の仕事に精通している。

安倍政権の成長戦略の全体像は6月5日に行われた安倍首相の講演で示されたが、当日午後には株価が大幅に下げる皮肉な展開となった。すると、安倍首相はすぐさま投資減税の検討について強調。世論と市場に機敏に反応する姿勢は鮮明だ。

世論対策と危機管理に長けたスタッフに守られている分、安倍首相の「本音」は読み取りにくい。参院選まで安倍カラーを慎重に隠しているのだろう。

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