マクラーレン570GTは実用的スーパーカーだ 効率を最大限に求めたボディデザインの秘密

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570GTでは、先に登場した570Sと比較してロードノイズを最大3デシベル削減する静粛性の高いピレリPゼロ(タイヤ)や、こちらも静粛性が高いエキゾーストシステムを採用。サスペンションは乗り心地に配慮したコンフォートなセッティングであり、ステアリングレシオも変更を施した。電動のステアリングコラムも乗降をサポートする装備である。さらにツーリングデッキとエンジンコンパートメントの間のバルクヘッドは、ノイズを吸収する消音効果の高い軽量素材が装着され、キャビンの静粛性を向上させている。

また、ツーリングデッキのフロア部分には、ノイズと共に熱を吸収する特殊素材を開発し採用。「570GTでフィッシングに行き、そこで釣れた魚が帰ってくる間にツーリングデッキの中でグリルされるようなことはありません(笑)」(マーク ロバーツ氏)と、入れた荷物が熱くなるようなこともないという。

実際に570GTに乗り込んでみると、スッと腰がシート近くに落ちる。その後、両足をフロアに回すのも楽だった。従来のモデルよりサイドシルがかなり低く設定されており、これであればスカートの女性でも難なくシートに座れそうだ。

「実はAピラー下にあるサイドシルの前方の開口部も従来モデルより大きく取ってあります。ヒールがそこにあたらないようなデザイン上の工夫であり、ここも実用性の向上をカタチにしたパートです。装備表には加わりませんが、こうした細部への配慮が570GTでは数多く採用されています」(マーク ロバーツ氏)。

ポルシェ 911にも負けない実用性

実用性をもったスポーツカーの代表といえば、これまではポルシェ 911がその筆頭に挙げられていたが、ミッドシップレイアウトを採用したハイパフォーマンスモデルながら、この使い勝手の良さと機能性の高さ、ホスピタリティはかなりのものと評価できる。そこには570Sのコンフォート仕様という以上の創意工夫があり、配慮が実現されているのだ。このクルマは570Sに荷室を追加し、乗り心地を良くした単なる追加モデルなどではない。

「マクラーレンの市販モデルに相応しいパフォーマンスやスタイリッシュなミッドシップカーの要素をもちながら、ロングツーリングも楽しめる初めての本格GTカーが570GTです。昼間はもちろんのこと、夜間ではまた別の表情と素敵な眺めを楽しめるパノラミックルーフも、オーナーにとってひとつひとつのロングドライブ(長距離の旅)を印象深い経験にしてくる名脇役になってくれるでしょう。パノラミックルーフは、570GTに採用されたアイデアの中で、私が一番気に入っている装備でもあります」(マーク ロバーツ氏)

570psのV8ツインターボエンジン、ミッドシップ、単体重量75kgのカーボンモノコックシャシー、乾燥重量1350kg、0-100km/h加速3.4秒、最高速度328km/hと、そのスペックだけをみればいかにもなスーパーカーだが、570GTはパフォーマンス第一主義が良しとされているスーパーカー界とそのオーナーに新たな提案を行う、マクラーレンが放つ新進気鋭のチャレンジャーでもあるのだ。

(文:櫻井健一)

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