QE3縮小のスピードに市場は順応できるか FOMCの「宿題」は、出口戦略の見直し

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1カ月当たり850億ドルの証券購入プログラム(QE3)では、昨年9月の導入以来「雇用見通しが大幅に改善するまで継続する」という方針が貫かれてきた。だが、「雇用見通しの大幅な改善」とは一体何を指すのかはっきりせず、民間エコノミストらによる多様な見通しの形成につながっていた。本欄でも、3月FOMCが定量的な判断基準を示せなかったことについて、『QE3の運用は裁量的にならざるを得ない』として解説した。

ところが6月19日、これまで数カ月にわたって繰り広げられてきたQE3の予想合戦に、突如幕が下りた。連邦公開市場委員会(FOMC)後に開かれた記者会見でバーナンキ議長がQE3縮小のパスについて具体的に言及したためだ。

2013年後半に縮小開始、来年半ばには終了

バーナンキ議長は、まずFOMCとして「財政政策やその他(新興国や欧州経済などの)の逆風が後退していくことにより、今後数四半期は成長率が緩やかに高まっていき、労働市場の回復が継続する。インフレ率も2%の目標に向かって戻っていく」(括弧内は筆者)と予想していると説明した。

この見通しを前提に、「今後得られる経済指標等が、こうした見通しに沿ったものであれば、QE3を2013年後半に縮小させ、その後の指標も概ね見通しと整合的であれば、来年上期を通じてゆっくりと段階を追ってQE3を縮小し、年半ばにはQE3を終える」という方針が示された。バーナンキ議長は、5月22日の議会証言でも、「条件が整えば今後数回のFOMCを経てQE3を縮小する」と発言し金融市場に大きなサプライズを与えたが、今回その方針を「FOMCのコンセンサス」として公式に発表したのである。

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