仕事のできない人はPDCAを軽視している 自問自答を止めない普遍のスキルが最強だ

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たとえば私が証券会社の営業を始めた頃は、営業マンにとって「情報」は命だった。しかし誰でも情報にアクセスできる時代になると情報の価値は必然的に下がる。

それを示すように、入社当時は主要な数字を頭に叩き込んでから顧客のもとに向かっていた営業スタイルが、会社を辞める直前では、その場でiPadを片手に情報を検索するだけで十分になっていた。その代わり、お客様から強く求められるようになったのは、資産運用に関するリアルタイムでの次の投資方針、より深いレベルでの助言である。お客様はPDCAを回してくれる営業マンを求めるようになった。

たとえば、「英語力」。ひと昔前までは英語が話せるだけで引く手あまただったのに、今では人材市場での差別化はできないし、自動翻訳の精度も年々上昇しているので、もしかしたら近い将来、通訳という職業はこの世からなくなるかもしれない。

「MBA(経営学修士)」にしてもそうだ。本屋に行けば『MBAで教える◯◯』といった類の本がいくらでも手に入るし、オンラインで授業動画を見ることすらできる。世界と比較すれば日本でのMBAホルダーはまだまだ少ないが、それでも年功序列制度の崩壊と国内MBAの増加でMBAホルダーは決して珍しい存在ではなくなった。

最近は海外へのMBA志願者が減っている傾向があるが、それは金融危機のせいではなく、MBAのビジネスツールとしての価値が薄れてきていることが原因ではないかと思う。

「PDCA力」をビジネススキルとして考える

では、「PDCA力」をビジネススキルとして考えたらどうだろうか? 今の世の中、正解がどんどん変わる。変わる前に手を打てる先見の明があれば理想だが、それがなくても変化を察知し順応する柔軟性があるだけでも十分、価値がある。それはまさにPDCA力である。

PDCAは対象を選ばない。どのような業界、どのような職種であっても応用できる。これほど万能なビジネススキルは存在しないと言っていい。いや、正確に言えばPDCAは個別のビジネススキルとはまったく別の次元にある。

PDCAは、個別のスキルの習得を加速させるためのベースだからである。PDCA力さえ上がればスキルの上達が圧倒的に速くなる。若いビジネスパーソンは1日でも早く成果を出そうと、英語やコミュニケーションスキルなど効果が見えやすい実用的なスキルの習得に躍起になるが、実はそうしたことに手をつける前にPDCA力を身に付けたほうが、中長期的に見ればはるかに大きな効果をもたらすのだ。

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