派遣先でパワハラ被害、派遣会社の責任は?

派遣元に助けてもらえると思い相談したが…

パワハラ被害を受けたとして、元派遣社員の男性が記者会見した

派遣先企業でのパワハラ被害を知りながら、必要な対策を取らないまま「雇い止め」したなどとして、都内に住む元派遣社員の男性(30代)が、大手派遣会社「リクルートスタッフィング」(リ社)などを相手に裁判を起こしている。

この男性は2015年、派遣先でパワハラ被害に遭い、医者から「抑うつ状態」の診断を受けた。そこで、派遣会社を通じて、職場環境を改善してもらおうと相談したところ、逆に派遣会社から「明日から出勤しなくてよい」と言われてしまったという。男性はその後、派遣先に出勤できないまま、契約期間満了で雇い止めされてしまった。

男性は、提訴後の記者会見で、「助けてもらえると思って相談したのに、派遣会社は企業寄りで、絶望を感じた」などと当時の気持ちを語っていた。

ネットでは、「派遣元にとっては派遣先もお客だから、言いにくいわな」と派遣会社に理解を示す意見も多く見られる。一般論として、派遣会社には派遣先での業務について、労働者を守る義務はないのだろうか。黒栁武史弁護士に聞いた。

派遣会社の責任を認めた「東レエンタープライズ事件」

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結論から言うと、派遣会社には、派遣先でのハラスメントから労働者を守る義務があります。この義務を果たさなかった場合、派遣労働者に対する損害賠償責任を負う可能性があるでしょう。

派遣会社の責任を認めた裁判例として、「東レエンタープライズ事件」(大阪高裁平成25年12月20日判決)を紹介します。この事案では、派遣先でセクハラ被害を受けたとして、派遣労働者の女性が派遣会社に損害賠償を求めました。

判決は、労働者派遣法31条を参照し、派遣会社は「派遣先が派遣就業に関する法令を遵守するように、その他派遣就業が適正に行われるように、必要な措置を講ずる等適切な配慮をすべき義務」を負うとしています。つまり、派遣労働者が問題なく勤務できるように、派遣先の労働環境に適切な働きかけをしなさいということです。

また、判決は、その義務の具体的内容として、派遣会社は、派遣先でのセクハラ被害の申告に対し、「事実関係を迅速かつ正確に調査し、派遣先に働きかけるなどして被害回復、再発防止のため誠実に対処する義務」や、被害を訴えた派遣労働者が「解雇されたり退職を余儀なくされたりすることのないよう配慮すべき義務」などを負うとしています。そして、派遣会社はこれらの義務を果たさなかったと認定して、同社に対し、女性への慰謝料として50万円を支払うよう命じました。

今回の男性の事案でも、男性の主張を前提とすれば、派遣先でのパワハラ被害への対処などを怠ったとして、派遣会社が損害賠償責任を負う可能性があると考えられます。

黒柳 武史(くろやなぎ・たけし)弁護士
2006年関西学院大学大学院司法研究科修了。2007年弁護士登録(大阪弁護士会)。取扱い分野は、民事・家事事件、労働事件、刑事事件など。
事務所名:中本総合法律事務所

 

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