苦しい三越伊勢丹、地方4店抜本改革の正念場 訪日客だけでなく中間層も「百貨店離れ」

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こうした衣料不振は他の百貨店も同じだ。高島屋の木本茂社長は「実質賃金は上がっているが、家計消費はマイナスが続いている。とくに被服を中心に節約志向が強まっている」と指摘。大丸松坂屋を持つJ.フロントリテイリングは、衣料の低迷を受け、現状の婦人服売り場の面積を2018年2月期に10%、中期的に30%圧縮する方針を掲げている。

三越伊勢丹では今後、衣料や婦人雑貨などの自主企画商品を拡充していくほか、11月下旬からはアリババグループの越境ECサイトに参入し、中国向けに高品質の日本製商品を販売していく。

とはいえ、現状のトレンドを打破する特効薬は見当たらない。会社側は2016年度の営業利益見通しを370億円から240億円(前期比27.5%減)に減額。さらに中期目標として掲げていた営業利益500億円の達成時期を、2018年度から2020年度に先送りすることを発表した。

地方4店は「早期に決断」

大西社長は「店舗閉鎖ありきではない」と前置きしつつも、「不採算事業・店舗は早期の意思決定をしていく」と言及。2017年3月には三越千葉店と三越多摩センター店の閉鎖が決定しているが、今回の決算発表会では伊勢丹松戸店、伊勢丹府中店、松山三越、広島三越について抜本的な構造改革を実施していく方針が明らかにされた。

三越伊勢丹の大西社長。ビジネスモデルの転換を図るが・・(撮影:今井康一)

収益柱である伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店など旗艦店に経営資源を集中させ、業績が低迷する地方店は売場面積の縮小や業態転換を実行するとみられる。そのほか、旅行やウェディングといった非百貨店事業を強化することで、従来の百貨店モデルからの脱却を図る方針だ。

ただ、圧倒的ボリュームを占める国内中間層に対して有効的な対策が実行されない限り、V字回復を実現するのは容易ではない。大西社長はビジネスモデルの転換を強調するが、その道のりが見えたとは到底言えない。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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