不妊治療、わたしはこれがつらかった! 今や不妊は国民病です 

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さらに、夫婦が苦痛にあえいだのが、フーナーテストといわれる性交直後に膣内にいる精子の様子を見る検査だ。

「朝起きてすぐ性交をするだけでも嫌なのに、よりによって当時は東日本大震災直後。朝、余震でグラグラ揺れながら、事務的な性交をするつらさときたらありませんでした」

検査の結果、奈津美さんの膣内で正男さんの精子が一つも動いていないことが判明した。

「夫は動揺を隠せませんでした。さらにつらいのが、『次は大丈夫かもしれないから』とその苦痛を3回も強いられたこと。でも結果は、いつもゼロ。そこから やっと、夫の精子検査に移ったのですが、展開が遅すぎる。女性の検査と男性の検査を同時進行でやれば、こんなに検査漬けにならずに済んだはずです」

夕飯の買い物をしてると泣けてくる

それでも、この医師は「名医」と呼ばれるだけに、つねに上から目線だった。痛くてつらい検査の連続、排卵剤の投与によるホルモンバランスの崩れや子どもができないストレスから心が壊れかかっているのに、心ない言葉を投げかけてくる。

「質問をすると『余計なことは聞くな。質問したいなら夜11時半に来い』と言われてしぶしぶ行ったこともあります。当時はまだ働いていたのに、『明日の2 時に来い』と言われて『仕事があるので無理です』と言ったら、『私はあなたのために時間を割くって言っているんです』とすごまれたこともあった。ここはも う無理だ、と思いました」

肝心の不妊の原因も、夫側にあるのか妻側にあるのか、明確にはわからなかった。人工授精も3回試したが、失敗に終わった。

「原因がわかったら解決策がありますが、わからなければ対処のしようがない。そのもどかしさも、本当につらかった」

結局、現在は、最先端で有名な都内の不妊治療専門病院に通う。

「いろいろ検査して、不妊の原因が精索静脈瘤(りゅう)という精子の通り道を血管がふさいでしまう夫の病気にあることが判明しました。夫が血管を切る手術を受ければ、妊娠の可能性は高まると。夫が、『俺にできることは何でもやる』と言ってくれるのが救いですね」

夫の手術を翌月に控え、治療にも一筋の光が見えつつある。

「わかってほしいのは、たとえ不妊原因が男性にあっても、検査、投薬など治療の負担は女性のほうが圧倒的に多いこと。どこの病院も患者がいっぱいで、朝8 時から夕方4時まで拘束されることもしょっちゅう。治療帰りの夕方、夕飯の買い物をしていると、『なぜ私だけがこんな目に遭うのか』と泣けてくることがよ くあります」

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