中国重視の修正を図った、仏オランド大統領 アベノミクスは、自国経済再生のヒントになったのか?

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その背景にはサルコジ前大統領が極端ともいえる「中国重視」だったのを軌道修正しようとの意向があったと見られる。むろん、急速な経済発展を遂げる中国はフランスにとっても無視できないパートナーだが、両国は「貿易不均衡」に直面する。中国は人権問題なども抱えているだけに、「警戒すべき相手でもあるのは事実」(フランスのジャーナリスト)。

オランド大統領は社会党の第一書記時代などを含めてもともと海外へ出た経験がほとんどなく、実は地元メディアで昨年5月の就任時から外交手腕を不安視する声が少なくなかった。ただ、幸いにもそうした経験の乏しさがむしろ、「日本と中国はいずれもフランスにとって対等のパートナー」という発想につながっている面があるのかもしれない。

 経済停滞でアベノミクスにも強い関心

大統領とともにフランスの要人が大挙して日本を訪れたのは、「アベノミクス」に対する関心の高さの表れという面もありそうだ。大統領は8日の東京都内での講演で、「“三本の矢”は世界中を駆けめぐっている」などと安倍首相が打ち出した政策を持ち上げた。仏AFP通信社東京支局のカリン・西村・プーペ記者は「アベノミクスによって今、何が起きているかを自分の眼で確かめたい、と考えた人が多かったのではないか」と推測する。

欧州債務危機をめぐるユーロ圏各国の対応をめぐり、オランド大統領は緊縮一辺倒の路線に異議を唱え、「成長戦略」の必要性を訴えている。「アベノミクス」はフランスのメディアなどに言わせると、「緊縮政策とは“真逆”の戦略」。ということは、日本の景気が今後、本格的に浮揚すれば、大統領の主張の正当性を裏付けることにもなる。「そうなると、大統領にとっては追い風」。こうした計算が働いたとしても不思議ではない。

最近のフランス経済は厳しさを増すばかりだ。なかでも深刻なのが雇用。失業率の悪化にはなかなか歯止めがかからない。特に若年層の職探しは難しく、4月の25歳以下の失業率は26.5%に達した。域内最大の経済大国でもあり、「ライバル国」でもあるドイツの7.5%を大幅に上回っている(欧州委員会統計局調べ)。国際通貨基金(IMF)の予測によれば、13年のフランスの実質経済成長率は前年比0.1%減と09年以来のマイナスに転落する見通しだ。

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