日本株がトランプショックで急落なら買いだ 「大統領選直後」の日本市場は100%荒れそう

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イエレンFRB議長は「11月の米大統領選挙の結果を確認したかった」と答えるのだろうか?FRB関係者は、「金融政策と政治情勢は別」という認識が強いようなので、明確にはコメントできないだろう。

1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での声明文に、昨年10月会合で見られた「次回会合での利上げを判断する上では」という表現が記載されていなかったのは、11月8日(東京時間9日)の米大統領選挙の投開票の結果に対する柔軟性を保持したかったと思われる。おそらく米国の利上げを否定するトランプ氏が勝利した際の混乱を警戒しているのだろう。

短期だった外国人買い、9日の乱高下は「織り込み済み」

さて、日本市場だが、外国人投資家による日本株買いは10月第4週まで続いていたことがわかった。10月第4週(24日-28日)の日経平均は前週比261円高(同+1.5%)、TOPIXは同27p高(同+1.9%)上昇している。

11月4日大引けに東証が発表した投資部門別売買動向では、外国人投資家が先物と現物合計で1863億円買い越している。これで今年初の4週連続の買い越しとなった。10月に入っての買い越し金額は1.6兆円ほどだが、現物株4717億円に対して、先物が1兆1743億円(225先物6215億円、TOPIX先物5548億円)と買い越し額の7割超を占めている。先物のポジションを現物株に置き換える可能性はあるものの、短期的な買いと見ておいたほうがよさそうだ。

実際、11月に入ると先物を中心とした売りで、日経平均やTOPIXは下げ幅を拡大。ともにじりじりとした上昇で積み上げた上げ幅を2日と4日の下げで帳消ししている。前回でテクニカル分析での需要なポイントと指摘した日経平均とTOPIXの「ネックライン」と言われる7月高値(日経平均は1万7613円、TOPIXは1412p)はともにクリアできていない。

トランプリスクという不透明要因による下落とはいえ、ネックライン手前で失速したことは、テクニカル面ではネガティブに映る。本格的な中長期的な反発局面は、米大統領選挙の投開票を前にいったんリセットされたと見たほうが良さそうだ。

今後の日本株の動向だが、内容が伝わる9日(水)に市場が乱高下するのはほぼ織り込み済みだろう。「乱高下を織り込む」というのも妙な話だが、米大統領選挙の開票状況を受けて、流動性が高くタイムリーに売買することができる市場は、その時間、東京市場しかないからだ。

市場では、「トランプ大統領誕生=株売り、ドル売り(円買い)」、「クリントン大統領誕生=株買い、ドル買い(円売り)」といった見方がされている。「トランプ大統領誕生」による下落は、「既成概念が破壊される怖さ」といった意味合いだろう。

一方、「クリントン大統領誕生」による買いは、「ひとまずトランプ大統領誕生の怖さが無くなった」という要因に思える。言葉を変えると「トランプ大統領誕生」が最大の懸念事項であることから、「トランプ大統領誕生」の瞬間が最大の混沌(カオス)と言える。もちろん、何をするかわからない「怖さ」は残るが、それは私的メール問題で米連邦捜査局(FBI)の再捜査を受けるクリントン氏も、性質は違えども同じだろう。どちらの「怖さ」を取るかで投資戦略は大きく変わる。

ちなみに、筆者は「トランプ大統領誕生」による急落時は買いと考えている。一方、「クリントン大統領誕生」時は静観のスタンスだ。

筆者がどちらの「怖さ」を選ぶかといわれれば、トランプ氏の「怖さ」を選びたい。議会との関係上、さほど無茶な政策は通らないだろう。また、史上初の実業家出身の米大統領による政策内容を見てみたい点もある(怖いもの見たさに近いか)。

なお、両者ともに「ドル高円安」に対しては否定的なコメントを発していることから、どちらに転んでも主力の輸出関連は手を出しにくい。不動産、建設、そして、マザーズなど新興市場の内需関連に注目する。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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