3Dを活用すれば原発の安全性は高まる 仏ダッソー・システムズ シャーレス社長兼CEOに聞く

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Bernard Charlès●兵役期間の出向勤務を経て1983年に設計技術の開発担当者としてダッソー・システムズに入社。1995年に戦略研究開発部門代表となり96年から現職。

――消費者ニーズをくみ取れていない日本企業が多い?

改革を必要としている日本企業は多いように思います。来日中に多くの企業経営者と会いましたが、変革を起こすプロセスについてのアドバイスを求められることが多い。製品を生み出すループを考えると、最初のアイデア出しをマーケティングが行い、そして最後の販売もマーケティングが行う。このように、製品ループの最初と最後にマーケティングを持っていくことが必要です。

たとえば自動車メーカーをみると、各社がそれぞれ課題に取り組んでいます。設計プロセスを変えようとしているメーカーもあれば、トヨタ自動車のようにアイデンティティ構築に取り組んでいるメーカーもあります。アイデンティティという点ではアウディやBMWなどが大きな成功を収めているが、トヨタもアイデンティティ作りに取り組んでいます。

日本のメーカーの生産システムは優れている。しかし感情をかき立てる、本当の意味でのすばらしいエクスペリエンス(経験)を生み出すことに苦戦しています。ジャガー、ランドローバーなどは生産台数こそ大きくないが、収益性は非常に高い。これはターゲットとする消費者に対して適切な製品を出すことができているからです。

50年前は、自動車業界のホットなトピックスはサスペンションでしたが、20年前に電子制御となり、現在はドライビング・エクスペリエンスとなっています。ダッソーのシステムを使えば走行時にどのような挙動をするか、デジタルモックアップでシミュレーションし、実際に製造する前にさまざまな角度からチェックできます。これは自動車だけでなく全ての製品について言えることですが、私たちは30年前から「作るよりも前に見ること」に取り組んでいます。

「作るよりも前に見る」利点

――「作るよりも前に見ること」のメリットは?

実際の飛行機は落とせませんし、船を沈没させることもできませんが、3Dであればさまざまな検証ができます。いくらぶつけても沈めてもコストがかからず、資源のムダにもならない。特に飛行機は、実物を作ったら必ず飛ぶ必要がある。もし飛べなかったらかなり恥ずかしい。だから作る前にすべてを見られるようにしなければなりません。こういう世界こそが、ダッソーのもともとの強みです。

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