勝負には負けたが「広島圧勝」と言える理由 「地方再生」では広島が勝っている

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一方の札幌ドーム。これは正直参りました。1塁側の前から5列目という良席に座ったにもかかわらず、前の人の頭が邪魔で、顔を横に移動しないとホームベースが見えない。

観客席が元々地上から数メートル上がっているためにグラウンドからそもそも遠い。これでは野球観戦の楽しみが半減です。さらには階段の段差があまりにも大きく、ご老人は上まで上がるのに何回もお休みになっているのを多数目撃しました。

これはマツダではあり得ない光景です。フロアも2階建てになっていて、しかも下のフロアにしかトイレがないために、ご老人はそれこそ下がって上がって、また上がる、ということを繰り返す羽目になり、ワタクシのお隣のおじい様は「トイレに行くのがしんどいのでビールが飲めない」、とぼやいておられました。

ワタクシの経験からすると補助金を取ると、野球専用スタジアムは恐らく許されないと思われます。札幌市民が100%野球ファンである、という保証はないので、コンサートやその他のスポーツにも適用する多目的施設という切り口ではないと補助金は出にくいのです。

札幌ドームは総工費約450億円だそうで、これは補助金なしには不可能な数字です。で、結局補助金を取るという前提で建設していまい、野球を見るには実に見にくい施設を作ってしまう。最大公約数を狙うがあまり、どの施設としても中途半端、という「いつもの公共施設の悪弊」がもろに出ています。

さらにいつも申し上げているように、建設費を丸々国に面倒を見させたとしても(実際は半分は札幌市の負担のようですが)、その後の維持管理費が膨大です。

建設費が「維持費も含めた金額全体のほぼ3分の1」と言われていますので、総額約450億円で建設した札幌ドームは、仮に耐用年数を20年とするならば、なんと900億円の維持管理費がかかることになります。

これは20年で割っても1年あたり45億円。あり得ませんが365日興業をすると考えても、一日あたりなんと1200万円程度の利益がある興業を引っ張ってくる計算になります。

これは絶対に不可能な数字で、結局このドームの維持費は札幌市民の負担にならざるを得ない。挙句の果てには、ドームにとって一番の収入源は日本ハムからの使用料なのに、肝心の野球が見にくくて仕方がないという顛末。これでは何のために作ったのか意味不明。盟友の木下斉(ひとし)君(東洋経済オンラインで連載中)の言葉を借りるなら、まさに「北の墓標」に近いと言わざるを得ない。

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