「終身雇用」崩壊間際!日本人はどう生きるか リンダ・グラットン氏からのアドバイスは?

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ジミーの父親の世代がジャックですが、おそらくこの年代の人々は65歳で定年を迎えるでしょう。ジミーもまた同じように考えているかもしれません。しかし寿命が延びれば、年金生活が20年以上となり、かなりゴルフをしなければなりません(笑)。

また現在40代のジミーの世代は、退職後の生活に備えて少なくとも新卒時代から収入の17.2%の貯蓄をしなくてはなりません。それだけ貯蓄している人は、貯蓄率が高い日本でもほとんどいないでしょう。するとジミーは、70代半ばまで働く必要があります。

20代のジェーンはどうでしょう。彼女はおそらく100歳まで生きるでしょう。もし65歳で定年を希望するなら、引退後の生活は35年。すると収入の25%を貯蓄する必要があります。老後の生活資金を減らすか、それとも貯蓄を増やすか、あるいは引退の時期を引き上げるか。おそらくジェーンの世代は80歳くらいまで働かなければなりません。

新たに予測される4つの人生ステージ

リンダ・グラットン/ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。2年に1度発表される世界で最も権威ある経営思想家ランキング「Thinkers50」では2003年以降、毎回ランキング入りを果たしている。組織のイノベーションを促進する「Hot Spots Movement」の創始者であり、85を超える企業と500人のエグゼクティブが参加する「働き方の未来コンソーシアム」を率いる(撮影:今 祥雄)

これまで多くの人は、学校、仕事、老後という3つのステージを人生において過ごしてきました。しかし長寿社会ではこれが崩れていくでしょう。日本人は休暇も取らずに長時間労働が当たり前になっていますが、80歳まで働くことを考えたとき、こんなことはとてもできませんよね。また誰もが同じ時期に進学し、就職し、結婚し、引退するといった人生設計ではなく、今後はおそらくマルチステージ化した人生が一般的になるでしょう。

予測される新しいステージは4つ。まずは「エクスプローラー」という探索の時期です。たとえば若者が大学卒業後、就職せずに世界中を旅する。こうした時期をギャップイヤーと言いますが、40代でも60代でも、こうした時期があっていいのです。長寿によって何千時間も増えるその一部を、自分自身や世界を知ることのために使いたいと思うのはごく自然なことです。

2つ目は、「インディペンデント・プロデューサー」。自分のビジネスを始めるということです。ロボティクスやAIなど、日本は最先端の技術でビジネスをグローバルに展開するチャンスがあります。アメリカでは55歳以上のアントレプレナーが非常に増えてきています。

また、人生の中で、仕事だけに専念するのではなく、週に3日は仕事、2日は地域貢献や趣味に費やし、残りは新しいスキルの習得のために使うという時期があってもいいと思います。これを「ポートフォリオ・ステージ」と呼んでいます。そして最後は「移行期」というステージです。新しい自分へと生まれ変わっていくための変身の時期です。

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