意外な子が「薬物中毒」に陥りやすい理由 依存症リスクを高める4つの性格特性

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出席者はランダムに選ばれるように見えるが、実はテストで極端なスコアを出した者だけが選ばれる。なおこのテストは、前述の高リスクの子どもたちの90%を見出せるテストである。彼らは最も問題となる特性に的を絞ったワークショップを受講する。

しかし、出席者が選ばれた理由は公開されず、生徒たちが尋ねた場合だけ正直な情報が提供される。しかし、ほとんどが尋ねることはなく、出席者はワークショップが自分に合ったもので有用だったという感想を述べることが多い。

「レッテルを貼らない」とコンロッド教授は言う。そうすることで「ハイリスク」などのレッテルを子供たちが意識して、自己成就予言が起こらないようにするのだ。

ワークショップでは、特定の感情面・行動面での問題を解決するための認知行動テクニックを教え、そうしたツールを使うよう生徒たちに勧める。

学校との連帯感は、薬物の使用を減らす要因に

プリベンチュアは最初に、英国、オーストラリア、オランダ、カナダで無作為化試験が8回行われ、極端な飲酒や頻繁な薬物の使用、飲酒関連の問題の削減につながるという結果が示された。

「JAMAサイキアトリー」誌で発表された2013年の研究では、英国の21の学校に通う13歳から14歳の生徒2600人超を対象とした結果が示された。全体としてプリベンチュアは、対象となった学校における飲酒を29%削減した。ワークショップに参加しなかった生徒の中でも飲酒は減ったのである。参加したハイリスクの生徒では、極端な飲酒が43%減少した。

コンロッド教授によると、非参加者の飲酒が減ったのは、ハイリスク生徒による集団への圧力が減ったからだろうという。また、教師へのトレーニングにより、ハイリスクの生徒に対して教師がより共感的になり、それによって生徒と学校との連帯感が高まったのではないかとも同教授は推察する。学校との連帯感は、薬物の使用を減らす要因の一つとして知られている。

2009年の研究でも、プリベンチュアは鬱やパニック、衝動的な行動などの症状を削減することが示された。

リスクにつながる性格特性を持つ子どもたちも、悲劇を起こしかねない道筋を変えることができる。そのためには、他人との違いを生じさせ、扱いにくくさせている要因をどうコントロールするかを学ぶことだ。

*Maia Szalavitz は、“Unbroken Brain: A Revolutionary New Way of Understanding Addiction(壊れていない脳:依存症を理解する画期的な新手法)”の著者。

(執筆:Maia Szalavitz、翻訳:東方雅美)
© 2016 New York Times News Service
 

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