手芸「ユザワヤ」の都心店で閉鎖が相次ぐワケ 行き詰まった2代目社長の拡大路線

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しかし、手芸品市場は趣味の多様化や主要顧客の高齢化で右肩下がり。新規顧客獲得を狙い、2007年に手芸がテーマのSNS「ユザワヤフレンドクラブ」を開設。2013年にはハンドメイド作品を、ネット販売・購入できるwebサイト「ユザワヤマーケット」を運営したが売り上げ増に繋がらず、それぞれ2015年11月、2016年10月に終了している。

転換点を迎えるユザワヤ

圧倒的な品揃えで主婦を中心に人気が高い(写真は蒲田本店)

一方で大量出店に伴いテナント料など固定費がかさみ経営を圧迫。ユザワヤ商事は非上場企業のため業績の詳細を公開していないが、2011年度、2013年度、2014年度に最終赤字を計上している。

そうした状況を受け、今年度に入り店舗拡大路線を撤回。「今後は出店をしっかり吟味する。店舗数を100や200まで伸ばすという段階ではない」(舩渡執行役員)とした。

新宿店に関しては「高速バスターミナルのバスタ新宿ができたことで新宿南口エリアの価値が上がり、オーナーの高島屋が百貨店を増床させたいということで契約更新に至らなかった」と話す。

ただ、都心部の店舗は近隣に移転せず閉める一方で、柏店や川崎店は閉店後も近隣に移転再オープンするなど、出店そのものは継続している。「テナント料の圧縮が進み安定的な利益が出せる体質になる」(舩渡執行役員)。今後は高齢者施設向けに手芸キットの販売を強化するなど、手堅く地道に売上を伸ばしていく方針だ。

過去10年の積極出店で、店舗網は全国規模に拡大したユザワヤ。ただ、拡大に見合う収益をあげることはできなかった。一連の反省を活かし、再び成長軌道に乗せることができるのか。手芸業界の雄は転換点を迎えている。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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