セミナーレポート

「持続的成長」と「高質な対話」
スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンスが、企業と投資家との関係を大きく変える。

拡大
縮小

講演III 企業経営の視点
経営最前線
CSV(Creating Shared Value)2.0

一橋大学大学院
国際企業戦略研究科
教授
名和 高司氏

一橋大学大学院の名和高司氏は、静的特性の高いクオリティ企業と、動的特性の高いオポチュニティ企業の両方の特性を併せ持った企業を「グローバル成長企業」と定義。糖尿病予防の活動を通じて、ブランド、人的資源といった、バランスシートには載らないが、将来価値につながる未財務的価値を蓄積する製薬会社の事例等を紹介し、動的と静的特性の二律背反を超克した企業におけるCSV経営の意義を説明した。名和氏は日本企業を「ビジネスモデルのLean(安さ)やコアコンピタンスのEdge(とがり)など静的特性に優れていますが、周囲を巻き込むLeverage(テコ)や強みのExtension(ずらし)など動的特性に欠けます」と分析、グローバル成長に向けたポイントを指摘した。

プロフェッショナル講演Ⅱ持続的な価値創造に向けて
ESG・ダイバーシティ時代における持続的な価値創造の実務上の課題と処方箋
「不都合な真実」に向き合う方法

PwCあらた有限責任監査法人
リスクアシュアランス
パートナー
久禮 由敬氏

PwCの久禮由敬氏は、ESGなどへの取り組みを持続的な企業価値向上に結びつけるうえで、直面する実務上の課題と解決策を説明した。「自社の適正な企業価値はいくらで、その根拠はなにか」の問いに答えるための非財務情報の役立ちを解説。特に「外部に開示するだけでなく、社内の意思決定に活用し、稼ぐ力にどうつながるのか、時間をかけてじっくりと社内で議論するのが重要」と指摘。その際に、時間軸を考慮して“風が吹けば桶屋が儲かる”のような簡潔明瞭な価値創造ストーリーを考える重要性を訴えた。また、取り組みの伝え方は「ステークホルダーからフィードバックを得て、企業価値を共創する姿勢が大事」と強調。断片的情報開示の改善や価値創造モデルとセットにした業績指標の設定など「伝わるレポーティング」を行うことの有効性を解説した。

ゲストスピーチ&ディスカッション
非財務情報コミュニケーションとESG投資

伊藤園
常務執行役員CSR推進部長
笹谷 秀光氏

CSVで先進的な取り組みをしている2社を迎え、パネルディスカッションをした。

伊藤園の笹谷秀光氏は、組織の社会的責任に関する国際規格、ISO26000を導入し、国連持続可能な開発目標SDGsの17目標を課題にして、社会価値と経済価値を同時実現するという、同社のCSVアプローチを説明。

同社がフォーチュン誌で「世界を変える企業50選」の18位に選定された理由でもある、耕作放棄地を活用した茶産地育成事業などの実践例を示した。

シュナイダーエレクトリック
Social Responsibility Manager East Asia & Japan
Meriem Kellou氏

フランスの重電メーカー、シュナイダーエレクトリックのメリアム・ケロー氏は、同社が独自に開発した「地球と社会のバロメーター」が持続可能な開発や事業成長を表す指標となり、エネルギー効率化支援による気候変動対策や、安全なエネルギーにアクセスできないアジアやアフリカの村落に住む人々の課題を解決するため、スタートアップ企業への投資や、人材トレーニングを提供する活動を行っていると紹介した。

東洋経済新報社『CSR企業総覧』の岸本吉浩編集長は「CSVはステークホルダーとの対話も大事で、メディアとしても貢献したい」とコメント。笹谷氏は「わかりやすく伝え企業価値を向上させるため『発信型三方よし』を提唱しています」と述べた。

また、名和高司教授の「社会課題解決と経済的価値」についての問いに、ケロー氏は「CSVを展開する各国での事業基盤強化につながると同時に、社会貢献は従業員の誇りになります」と、仕事効率や人材確保への効果を挙げた。

(コメンテーター)
東洋経済新報社『CSR企業総覧』岸本吉浩編集長
(モデレーター)
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 名和高司氏

 

お問い合わせ
コムジェスト・アセットマネジメント株式会社
コムジェスト・アセットマネジメント株式会社
ウェブサイトはこちら