年金の支給開始年齢は「70歳以上」で十分だ

まずは高齢者が働ける環境作りを

今後、先進国の65歳以上の人口比率は5分の1に達し、最終的には3分の1にまで上昇するとみられている。このまま現行制度が続けば、年金支給額は公的支出の中でさらに突出していくだろう。奇跡的な景気回復でも起こらないかぎり、政府債務の削減はますます困難になる。

先進諸国は定年を段階的に引き上げているが、労働組合や年金生活者団体が激しく抵抗している。ドイツ政府は2014年、労組の圧力に屈して一部の手工業者の年金支給開始年齢を実質的に引き下げた。同国はユーロ諸国に逆のことを指導しているにもかかわらずだ。

年金制度をめぐっては“神話”がある。年金支給を遅らせるため高齢者に労働参加を認めれば、失業率が高まるというものだ。しかしこの理屈は、世の中の仕事量が限定的という「労働塊の誤謬」に基づいており、間違った考え方だ。

現実的には労働者や消費者、納税者の数が増えれば、経済は活性化し、雇用も増える。定年の引き上げは雇用も創出するのである。

筆者は8月にスイスで開かれた世界人口統計高齢化問題のフォーラムで取りまとめ役を務めた。会合では、われわれは人口動態予測に関する豊富な知識を有するが、問題解決に向けた足並みは十分にそろっていないとの結論に達した。

企業は就業期間の抜本的見直しを

年金制度改革が道半ばにある責任は政府にもあるが、特に企業側の責任が大きい。現行では企業の給与体系は高齢層に手厚く、合理化する際にはまず高齢者から解雇しようとする傾向が強い。高齢者が長く働ける環境整備を企業が怠っているのだ。

2008年の経済危機から回復がもたついている根底には、こうした不都合な現実に先進諸国が目を背けてきた事情がある。公的支出を今後も定年退職者に大量かつ長期的に振り向けるような国家には、破産リスクが生じて当然である。今、先進諸国の政府や企業、個人にとって喫緊の課題は、企業における就業期間のあり方を抜本的に見直すことだ。

週刊東洋経済11月5日号

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