「モヤさま」の「ユルくてマジメ」な舞台裏 伊藤隆行プロデューサーに聞く

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面白い人をより面白くする「他愛もない」秘訣

伊藤氏は『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』(集英社新書)の中で、「上に立つものは媒介者であれ」と書いている。プロデューサーとは、番組の中に自分が自分がと“我”をにじませることではなく、タレントとスタッフの力を最大限引き出せればいいとしている。「モヤさま」では、「さまぁ~ずをどう生かすか」ということだという。
「モヤさま」は、北新宿や新井薬師前といったテレビ番組ではあまり取り上げられることのない街、ハワイや日光などの有名な街のあまり知られていない場所を歩きながら、地元の人や街にある変わった店、スポットなど、3人が“モヤモヤする”ことにツッコミを入れながらブラブラする番組。「街をぶらぶら歩く」ことだけが決まっており、中身は出演者任せ。だからこそ、いかに「気持ちよく現場で活躍してもらう」かがカギを握っているようだ。

――「モヤさま」はどのように撮影しているのですか。

 大まかな場所と、どこに行くかはあらかた決めています。あらかたと言っても、ルートと取材したいなぁというポイントくらい。ただ、さまぁ~ずさんとの打ち合わせは当日の朝になってから。それも10分もないです(笑)。だから、台本はあってないようなものですね。

特に、三村さんは3分くらいすると、寝ているんじゃないかという感じになるんです。目をつぶっていますし(笑)。「今、聞いてます?」と聞くと、「ん?」と。おそらくあんまり聞いていないかもしれませんが、それくらいがちょうどいい。さまぁ~ずはそういうコンビだと思います。

(C)テレビ東京

――現場ではどういったことを気にしているんですか。

ロケでは、午前中から日没までずっと一緒にいます。だから、さまぁ~ずが「いい人に囲まれる」ことを意識しています。さまぁ~ずの2人は、照れ屋さんというか、人見知りがひどくて、こっちが緊張してしまうような人たちなので、スタッフには「いい人」を集めて、楽しく過ごしてもらう工夫をしています。

ただ、ロケをやっていると、だいたい1時間ぐらいで皆、静かになるんです。6~7時間ずっと話しているわけではないですから。そうなると、僕の出番です。「ちょっと静かすぎないですか」と声をかける。最近では、さまぁ~ずの2人はツイッターをやっているので、「遅いっすね、打つの。毎分2文字くらいじゃないですか」と話しかける。そうすると、「うるせーな」と返してくれる。そういう他愛もない話をしています。

ずっと話してほしいわけではなく、テンションだけは保っていてほしいんです。こうやって話していると「そろそろ本番です」とアシスタントディレクター(AD)が呼びにきます。くだらない話をしたまま、その空気のまま、本番に入ってもらう。気持ちが一度切れると戻すのが大変ですから、そうならないようにしています。極端な話、ロケバスの中で直前まで話していた無駄話からそのまま収録が始まったりするのです(笑)。

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